ポケゼミ報告2014「森の創りだすもの」

森林育成学分野 教授 徳地 直子


 ポケゼミ“森の創り出すもの”はこれまで和歌山研究林において開催されてきた。しかし、今年度は2011年の台風被害の復旧工事がはじまったことなどから、芦生研究林に場所を移して、9月2日から4日の2泊3日の日程で開催された。目的はこれまでと同じく、森がわたしたちにもたらしてくれる有形・無形のさまざまなものを科学的に認識すること,つまり森の実際の姿や森の作り出す機能の創出のためにどのようなしくみがあるのかを知ることにある。特にこのポケゼミ“森の創りだすもの”は,森に入って,森にふれ,さまざまな森の性質をとらえることを目的としている。
 初日は午前中に芦生研究林の最寄り駅である園部駅に集合し、芦生研究林からの迎えのバスに乗り、芦生研究林に入った。京都から訪れると京都と芦生研究林の気温の違いが明らかであり、冷温帯樹種が分布する説明などが受け入れやすかったようである。クラブで一息ついた後、森の働きのひとつである河川生態系の維持について知るため、事務所脇の由良川で河川水の採水ならびに水生昆虫を採取し、同定を行った。ついで、軌道に沿って森林を見学した。軌道沿いに分布する人工林を観察し、人工林がどのように成立し、維持されているか、施業の必要性について説明した。夜には、河川生態系の機能について講義を受け、森林河川の水質形成やならびに水生昆虫についてTAからも説明を受けた。
 翌日は、杉尾峠から長治谷に沿って、森林観察をしながら、その途中で水質の測定や水生昆虫の採取を行った。また、人工林の間伐後地である宮の森を訪れ、その様子を観察し、河川水を採取した。講義室でパックテストによる水質分析を行い、初日の河川とは、河川幅や森林との関係、攪乱の状態が異なることから、水質などに違いがみられることを確認した。
 3日目はクラブでTAの指導によりレポートをまとめた。学生たちは力を合わせてレポートを作成し素晴らしいレポートが提出された。アンケートにはもっとフィールドにでたかった、人工林の施業に関わりたかったといった意見が寄せられ、学生が森林に前向きに取り組もうとしている様子が伝わってくるものだった。
 最後になりましたが、研究発表や生活指導と多岐にわたって活躍してくれたTAの山本知実氏・田宮雄大氏、芦生研究林の職員に感謝いたします。