森里海シンポジウムの開催

森里海連環学教育ユニット 安佛 かおり

 2014年12月14日(日)に、京都大学・日本財団森里海シンポジウム「人と自然のつながり」を育てる地域の力-淡海(おうみ)発・企業の挑戦-を、キャンパスプラザ京都で開催しました。今回の森里海シンポジウムでは、琵琶湖を抱え環境先進県と言われる滋賀県を舞台に、環境マネジメントや地域振興に取り組む企業の取り組みを報告いただきました。
 基調講演では、嘉田由紀子前・滋賀県知事に、研究者や知事として琵琶湖辺の環境や人々の暮らしと関わる中でどのようなことを考えてどのような取り組みをされてきたのかをお話いただきました。環境共生、生活環境主義、ふれあい価値など、自然と人の暮らしのつながりを重視されてきたことがとても明確に感じられました。
 つづいて、滋賀県の企業から、たねや農藝(讃岐和幸氏)、コクヨ工業滋賀(前田賢一氏)、滋賀銀行(辰巳勝則氏)の取り組みをそれぞれお話しいただきました。讃岐氏からは、甲子園球場3つ分の新しい敷地を「人々の集まる森のお菓子屋さん」とするべく取り組んでおられる“森を作り里を作る”活動について、前田氏からは、琵琶湖・淀川水系のヨシを原材料の一部として使用したノート【ReEDEN】シリーズの開発・製造・販売にまつわるお話や有志数人から始められたヨシ刈り活動の拡がりについて、辰巳氏からは、「環境格付」を通した企業の環境配慮の取り組みの促進やさまざまなつながりを創出する「環境コミュニケーション」の取り組みについてご紹介いただきました。
 次に、森里海連環学からみる淡海の企業の挑戦と題して、「環境ガバナンス・地域振興」(吉積巳貴特定准教授)、「企業活動と環境」(吉野章地球環境学堂准教授)、「森林・里山環境」(柴田昌三地球環境学堂教授)の各視点から3企業の取り組みについて解説を行い、清水夏樹特定准教授のコーディネートでパネルディスカッション「森里海連環を通じた“ものづくり”“ひとづくり”“地域づくり”」を行いました。パネルディスカッションでは、滋賀県では琵琶湖を抱える以外にも宗教的要素などの文化背景も地域や人のつながりを支えていること、企業の環境に対する取り組みを継続させるために必要なこと、地域でのネットワークの作り方などについて意見が交わされました。嘉田前・知事からは、研究者や学者は政治に背を向けないでほしいという願いと女性の社会進出と感性への期待が述べられました。
 師走の忙しい時期ではありましたが、多くの方々がお越し下さり、参加者は150名を超えました。京都と滋賀だけでなく関東圏や沖縄からも参加いただき、今回のテーマに関する興味の拡がりを感じました。来場者アンケートの「参加しようと思われた理由はなんですか」という設問には、およそ半分の方から“森里海連環学に興味をひかれたから”という回答をいただきました。また、最後に書いていただいた感想欄では、これまでの人生体験を反映してか、様々な視点からのコメントをいただきました。「森里海連環学」に対する市民の関心の高さを感じるとともに、人と自然のつながりを生み出すさまざまな要素の絡み合いを再認識しました。森里海連環学が新しい形の融合研究となるように今後とも真摯に取り組んでいきたいと思います。ご来場いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

ニュースレター35号 2015年2月 社会連携ノート
年報12号 2014年度