第24回芦生公開講座の開催

森林情報学分野 坂野上 なお

 第24回公開講座を、芦生研究林にて2014年11月1~2日に開催しました。京大ウィークスの期間に合わせて、芦生では初めての秋季開催(昨年は悪天候のため大学キャンパスで講義のみ実施)です。今年も少々雨模様ではありましたが、ちょうど紅葉の始まった芦生に一般19名、高校生枠2校11名、計30名の受講生を迎えることができました。なお、今年は75名の受講申込があり、抽選での選考となりました。
 今回のテーマは「生態学からみる、森と地球と私たち」。森の中の小さな生き物の営みから、地球環境を総合的に大きくとらえるための考え方まで、生態学を切り口にミクロとマクロの目線で森と地球の環境について学ぶという趣旨です。
 1日目の午前中、德地直子林長による芦生研究林の概要説明の後、生態学研究センターの大園享司准教授に「キノコとカビが語る芦生の森の魅力」について講義いただきました。冒頭「『菌類』だと思う名前をできるだけたくさん挙げてください」との呼びかけに、皆さん頭をひねりながらキノコやカビの名前を書き出していました。続いて、落ち葉を分解する菌のなかには、実は葉が生きているうちからそこに潜んでいる“内生菌”があることなど、芦生をフィールドにした研究の成果を話していただきました。フィールド研の伊勢武史准教授からは「森からわかる地球の話」と題して、地球環境を理解するためには、異なる学問分野をつないで考える“システム思考”が必要なこと、そうした考え方に基づく“地球システム科学”という新しい学問分野について様々な事例を挙げてわかりやすく解説しました。
 昼食後、林大輔技術職員がカエデ属の判別方法を、樹木サンプルを使いながら説明しました。坂野上からは、原生的といわれる芦生の森には、実は江戸初期から木地師(きじし)らが住んでいたことなど、森と人とが関わってきた歴史を説明しました。その後、トロッコ軌道に沿って、かつて炭焼を行っていた灰野集落の跡地までを往復し、1日目の日程を終えました。
 2日目は、杉尾峠から長治谷までの上谷歩道を散策し、自然観察を行いました。受講生の皆さんには、色づき始めた紅葉、そして前日の講義で学んだ様々なキノコ類の出現する様子など、秋の芦生を楽しんでいただけたと思います。
 あいにくの空模様で、林内散策時に雨も降りましたが、幸い気温はあまり下がらなかったため、カッパと傘でしのぎつつ、歩き通すことができました。講座終了後のアンケートでは、約8割の受講生から受講内容に満足したとの回答をいただきました。運営にご協力いただきました関係各位ならびに受講生の皆さんに感謝申し上げます。

ニュースレター35号 2015年2月 社会連携ノート
年報12号 2014年度