北海道大学、京都大学、琉球大学 フィールド科学シンポジウム

森林資源管理学分野 竹内 典之


 多くの大学でフィールド関連施設がフィールドセンターとして組織統合が図られてきた。そのような中で学部を越えた全学共同利用施設として発足した亜寒帯域に立地する北海道大学北方生物圏フィールド科学センター、温帯域に立地する京都大学フィールド科学教育研究センター、亜熱帯域に立地する琉球大学熱帯生物圏研究センターは、共同研究の展開を目標に3大学連携フィールド科学シンポジウムを平成14年度から開催してきた。
 平成17年度は、北海道大学のお世話のもとに、全国大学フィールド科学センターの連携への展開をも視野に入れて、7月5日から7日の3日間にわたって開催された。
 7月5日は、「森と海をつなぐフィールドサイエンス」をテーマに名寄市北国博物館において公開シンポジウムが開催された。柴田英昭(北海道大学)、山下 洋(京都大学)、中村 将(琉球大学)、鈴木邦輝(北国博物館)、門松昌彦(北海道大学)各氏による基調報告の後、総合討論が行われた。討論は、十勝川温泉に場所を変えた懇親会にも引き継がれ、深夜にまでおよんだ。
 7月6日には、北海道大学北方生物圏フィールド科学センターが中心となって研究を進めている天塩川・琴平川・中川北大研究林の見学後、次の会場である札幌へ移動した。
 7月7日の午前中には、北方生物圏フィールド科学センター講義室において、人間が生活する生物圏(森林圏・耕地圏・水圏)での資源生産活動と地球環境保全という背反する問題を解決するため、人間と自然の共生を求めて人間環境共生系を創造するための新しい学問であるフィールドサイエンスの現状と課題について、教員・若手研究者・大学院生による20点のポスター発表が行われた。京都大学からは木村千秋・阪本三和・高橋絵里奈・渡邊 薫の4院生がポスター発表を行った。発表会場は熱気に包まれ、活発な討論、意見交換が各所で展開された。
 7月7日の午後には、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター会議室において、全国フィールド科学シンポジウムが開催された。北の帯広畜産大学畜産フィールド科学センターから南の琉球大学熱帯生物圏研究センターまで16大学38名が参加し、各大学における現状と問題点について説明した。また、三枝正彦東北大学複合生態フィールド教育研究センター長による「複合生態フィールド科学を目指して」と田中 克京都大学フィールド科学教育研究センター長による「森里海連環学のすすめ-海の研究者の森への思い」の講演の後、上田 宏北海道大学北方生物圏フィールド科学センター教授による現代的教育ニーズ取組支援プログラム「北方地域人間環境科学教育プログラム-総合的環境科学教育による地域活性化」について説明があった。活発な質疑応答の後、山下 洋教授(京都大学)の「教育審議会から大学院教育充実のため実習施設機能の拡充が提案されており、フィールド施設が連携して平成19年度概算要求に向け大型予算の申請をしてはどうか」との提案を受けて、座長の上田 宏教授(北海道大学)より今後の全国大学フィールド科学シンポジウムのあり方について、
1. 平成19年度概算要求に向け、作業部会をつくり、具体的な検討を開始する。
2. 全国大学フィールド科学シンポジウムを平成18年度は京都大学において開催する。
3. 全国大学フィールド科学ネットワークのためのメーリングリストを作成し、情報交換する。
との提案があり、可決され、シンポジウムは閉会となった。

ニュースレター6号 2005年11月 研究ノート