リレー講義「海域・陸域統合管理論」

海洋生物多様性保全学分野 白山 義久


 本講は今年度開講した新しい全学共通科目である。現在日本の沿岸環境には、赤潮の頻発を始めとした様々な問題が存在するが、これらの問題の大部分の原因は陸域に住む人類の活動に起因している。したがって沿岸環境を保全するためには、海域のみならず陸域を含めて統合的に環境を保全、あるいは管理することが不可欠である。
 海域・陸域を統合的に管理するような幅広い政策を立案するためには、関連する様々な事項に精通した人材、すなわち沿岸の海洋生物学や、沿岸と密接に関連する森林・河川の生態学のような自然科学の知識のみならず、海洋関連・環境保全関連の法律や環境経済学的視点なども身につけた人材が必須である。しかし、我が国の従来の教育システムではその様な人材を育成することは困難であった。本講義は時代の要請にこたえ、統合的沿岸管理に関する広範な知識を身につけた上で、政策立案やNGO活動にかかわることのできる優秀な人材の育成を目指したものである。
 文科系の講義は、フィールド研の人材では行えないので、学外から非常勤講師をお招きして、講義内容を充実させた。そしてそのために必要な謝金・旅費は、統合的沿岸管理の必要性について、同様の認識を持っている日本財団から財政支援を頂戴した。
 具体的な講義内容は、沿岸海洋学の基礎(白山義久:フィールド研)、森里と沿岸海洋との連環(竹内典之・西村和雄:フィールド研)、森里海の持続的な経済マネジメントシステム(有路昌彦:アミタ株式会社持続可能経済研究所)、沿岸管理と法律(磯崎博司:明治学院大学)、統合的沿岸環境管理論(松田治:広島大学・名誉教授)となっており、その他、最終回に森里海連環学と合同のシンポジウムを実施する予定にしている。
 現時点で68名が履習登録をしているが、その所属学部は理学・農学などの自然科学系のみならず法学・経済などの文科系にも散らばっており、講義内容同様、多彩な構成となっている。

IMG_4089

ニュースレター6号 2005年11月 教育ノート