少人数セミナー「北海道東部根釧地方の自然景観」

(竹内 典之・梅本 信也 記)


 フィールド科学教育研究センター北海道研究林白糠区研究管理棟を拠点に6泊7日(2003年8月8日~13日)のセミナーを実施した。本セミナーは、気象・地象・海象,生物,人為の相互関係によって様々な景観が創り出されていることを実際に自らの目で確かめ、様々な景観を創り出している要因について検討すると共、どのような生物(特に植物)がどのような生活を営んでいるかを解明していくための突破口を新入生諸君に提供することを目的として開講したものである。クラブの合宿等と重なってしまったため受講生は工学部、経済学部、法学部各1名と農学部3名の計6名であったが、8月9日には長尾京都大学総長,8月9日~12日には田中センター長の参加も得て、充実したセミナーを実施することができた。長尾総長には討論にも参加いただき、また、「京都大学の基本理念」についてのレクチャーと学生諸君への激励の言葉もいただいた。
 セミナーは、昼間はフィールド観察と調査、夜はデータ整理と討論を基本に進めた。まず、白糠区天然林については、尾根筋の針葉樹(トドマツ)の多い森林から低地部のほとんど針葉樹を欠く落葉広葉樹の森林への変化を観察し、学生実習用固定標準地で樹種同定と直径測定の実習を行い、データ整理とコンピューター入力、過去のデータとの比較検討を行った。釧路湿原では、低層湿原、高層湿原、湿原端旧軌道敷での植生調査を行い、種組成・種数等の相違について検討し、レポートを作成した。海岸林については、尻羽岬において風衝地の草原、ミヤマハンノキ林、ダケカンバ林、針広混交林への変化を観察した。
 また、本セミナーでは、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所を訪問し、実験所長向井宏教授から「森と海の相互作用」の講義を受けた。向井教授自身が蓄積された豊富なデータに基づいた講義は、説得力があり、学生たちには大いなる刺激となったと思う。
 アンケート調査の結果も概ね好評であった。また、帰京後、参加学生から「自然を見る目が変わった。草や木が身近になった気がします。」とmailによる便りもあり、ほぼ初期の目標は達成できたのではないかと考える。(竹内 典之・梅本 信也 記)

ニュースレター1号 2004年 2月 教育ノート