ILASセミナー報告2016「原生的な森林の働き」

森林情報学分野 講師 中島 皇


 今年度も調整が上手く行って4月に開講出来た。4月20日(水)に初回の顔合わせを行い、2回目は5月19日(木)に北白川試験地のj.Podで「森林の働きについて」のゼミ。6月4日(土)には当方の同期会(クラブ)が香川県で開催されるのにぶつかったが、都市近郊林と見本林の見学に上賀茂試験地へ1dayゼミ。最終が芦生研究林で7月初めの合宿形式ゼミ(2泊3日)になる。参加者は定員に近い7名(男5、女2)であった。学部別は文2、工1,農4、出身地は福岡市2、神戸市、吹田市、京都市、大津市、国分寺市と今年は関東の出身者の参加があった。フィールド(森林)に出て、自ら体験し、考え、自然と人間の関わり方に興味を持つ契機とすることがこのゼミの目的である。
 7月1日(金):集中ゼミは京都市左京区の北端広河原バス停集合で始まる。出町柳発32番の京都バス。鞍馬温泉から北は自由乗降バスになる。バスが近づくのを知らせるために音楽を鳴らすが始発から終点まで乗車する人にはどうか?芦生研究林からの迎車で芦生へ。昼食後、身支度を整えて由良川本流沿い(芦生では標高が低い谷沿い)の自然を観察しながら、トロッコ道を歩く。TAは森林育成学研究室の大学院生(M1の二人)である。夕食はお好み焼き。皆で自分の「始末」は自分ですることもゼミの重要な要素である。夜は、芦生の概要説明と研究林が抱える問題点を話し合った。
 7月2日(土):今年は天気に恵まれていた。内杉谷にある伏条台杉や雪崩道、幽仙谷集水域天然林研究区(暖温帯と冷温帯の移行帯の大面積・長期プロット)の量水堰等でも説明を受けた。事務所より400m程標高の高い稜線にある林道からの眺め良し。杉尾峠に近い福井県境からは日本海(若狭湾)も見えた(写真左)。由良川最源流の斜面裾から水が滲み出している。原生的と言われる上谷で途中昼食(今年はおかず付き)を取りながら、約3時間半歩いて長治谷に到着。あまりにも分業が進み過ぎて便利過ぎる現代社会を、人為や人間の影響が比較的少ない(見られ無い訳ではない)原生的な森林を基準に考えてくれれば、このゼミを開講している意味があると考えている。幽仙谷とは異なるタイプの量水堰、下谷の大桂、二次林と人工林も観察した。下山後、事務所構内で芦生研究林の技術職員による指導で「木を測る」実習を実施した。物事を定量的に知る基本であるもの測り方」は重要かつ基本的な技術であることを実感してくれたであろう。夕食はカレー。腹一杯食べて満足か。食後は大学院生TAである先輩の研究紹介を毎年のことであるが眠気と戦いながらも聞き、質問をしていた。
 7月3日(日) 最終日はこの3日間のまとめ。レポートと片付けである。幽仙谷で回収してきた天然林からの流出物と水生昆虫の観察とデッサン。アンケートに答えて感想文を書いた後、スパゲッティの昼食。宿舎・食堂の片付けをして、広河原バス停までの送りで、セミナーは終了となった。