北海道研究林におけるコロナ下の研究補助業務

北海道研究林長/森林情報学分野 准教授 小林 和也

 2021 年度も新型コロナウイルス感染症の影響は大きく、特に緊急事態宣言中は移動の自粛等が要請され、大学でも講義が全面的にオンラインで実施されるなど対応に追われ、フィールド研においても、その本分であるフィールドワークを通じて自然環境と人のつながりを実地で学び、研究することが難しい状況下に追い込まれてしまった。そのような中にあっても教育や調査研究を続けていくために、実習用動画コンテンツの作成や研究資料の採集代行、Zoom を用いた遠隔地への学生指導などを行った。これらの多くは北海道研究林が保有していた既存の設備やコンテンツを拡充することで対応できており、元々遠隔地であることからオンラインの会議やセミナー、標本採集依頼への対応を行ってきた経験が生かされた。
 北海道研究林で予定されていた実習は、全て中止またはオンラインで実施となった。フィールドに出ることなく実習に代わりうる教育効果をえることは不可能ではあるものの、それでも通常行っている実習の内容を伝え、フィールドの様子を知ってもらうため、また、対面実習が再開できた際にも利用できるよう意識しながら、代替となる動画コンテンツ作成を進め、樹木の伐倒方法、苗木の植え付け方法、毎木調査方法については技術職員らに作成していただいた。加えて、少しでも野外活動を取り入れられるよう調査課題としてフィールドビンゴの手法を取り入れた(図1)。オンライン講義で用語を説明し、植物や昆虫の特徴を覚えて、実際に各自で撮影してきてもらうという課題である。引率できない野外活動となるため、事前の講義で各種野外活動の注意事項を念入りに伝えるなどの工夫が必要であった。
 実習と同様、調査研究においても満足にフィールドに行けない状態が続いていた。例年、資料の採集依頼を受けることはあったが、基本的には1度は依頼者に来研していただき、資料の扱い方や採集方法などの打ち合わせをしていただくようお願いしていた。感染拡大で移動の制限された状況下であったため、来研したことがない研究者からも研究資料の採集代行を受け付け、キクラゲ、エゾハルゼミ、ギョウジャニンニクなどの採集を行った。いずれも大まかな識別点と資料の採集、保管方法を連絡していただき、北海道研究林の教職員が日常業務で林内作業中に見つけたものを送付した。このうち、キクラゲについては国内初記録の種(Auricularia americana s. str.)として報告され、北海道から多くの標本が得られたことから和名としてキタキクラゲが提唱された(図2)。

年報19号 2021年度 主な取り組み