東北地域連携講座「森里海連環学と沿岸管理~東北沿岸の復興をどう進めるか~」

海域陸域統合管理学研究部門 向井 宏


 2011年3月11日の東日本大震災によって東北地方の沿岸域は、壊滅的な被害を受けた。その後、今後の復興に向けた取り組みが進められており、その方向性も少しずつ輪郭を現し始めている。これからの復興には、単なる復旧ではなく、私たちの生き方も含めて、新しい考え方に基づく未来の循環型環境重視型の社会づくりが求められている。フィールド研が2003年に立ち上げた森里海連環学には、東日本大震災からの復興が、日本社会のこれまでの延長線上での単なる復興ではなく、自然への畏敬の念を取り戻し、自然と自然、人と自然ならびに人と人のつながりを再構築することにより、真に循環的で持続的な社会を新生する上で極めて重要な役割を担うものと、大きな期待が寄せられている。私たちは、このような思いから第1回東北地域連携講座を「森里海連環学と沿岸管理~東北沿岸の復興をどう進めるか~」というテーマで開催することとした。
 場所は、京都会館会議場。開催日は、2011年7月16日。当日は祇園祭の宵山にもかかわらず、13時から18時までの5時間にわたって200人近い人々が参集し、講演に耳を傾け、熱心に討論に参加した。
 京大フィールド研社会連携教授であり、「森は海の恋人」運動を通して森里海連環学の実践に取り組んでいる畠山重篤さんが津波被害に遭われたことから、「森は海の恋人」運動の再興を応援するとともに、新しい社会づくりに向けて、森里海連環学の立場からどう取り組んでいくべきかについて、畠山さんを始め、現地からの報告を聞いた上で、これからの社会を担う多くの若者たちと討論し、さらに彼らが森里海連環学を通した東北復興に関わることを大いに期待して、講演会を開催したものである。この講演と討論の集いは、日本財団からの助成金によってすべて賄われた。

 当日のプログラムと講師、演題は以下の通りである。

プログラム(進行:佐藤真行(フィールド研特定准教授)
開会挨拶:柴田昌三(フィールド研センター長)
講演:
尾池和夫(高等研究所長・前京都大学総長)
 「2011年東北地方太平洋沖大地震」
高柳和史(水産総合研究センター本部 研究推進部長)
 「漁業復興へ向けての取り組み」
浅利美鈴(京大環境科学センター助教)
 「復興に向けた災害がれきとの闘い(現地からの報告)」
畠山重篤(フィールド研社会連携教授・NPO「森は海の恋人」代表) 「森里海連環と『森は海の恋人』運動の復興(現地からの報告)」
討論:司会:向井 宏(フィールド研特任教授)
田中克(高等研究所教授)・吉岡崇仁(フィールド研教授)・尾池和夫・高柳和史・畠山重篤・浅利美鈴
まとめおよび閉会挨拶:山下洋(フィールド研副センター長)

ニュースレター24号 2011年9月 社会連携ノート


(以下、2011年度年報のための原稿)

海域陸域統合管理学研究部門 向井 宏

 2011年3月11日の東日本大震災によって東北地方の沿岸域は、壊滅的な被害を受けた。その後、復興に向けた取り組みが進められており、その方向性も少しずつ輪郭を現し始めている。これからの復興は、単なる復旧ではなく、私たちの生き方も含めて、新しい考え方に基づく未来の循環型環境重視型の社会づくりが求められている。フィールド研が2003年に立ち上げた森里海連環学は、東日本大震災からの復興が、日本社会のこれまでの延長線上での単なる復興ではなく、自然への畏敬の念を取り戻し、自然と自然、人と自然ならびに人と人のつながりを再構築することにより、真に循環的で持続的な社会を新生する上で極めて重要な役割を担うものと、大きな期待が寄せられている。私たち京大フィールド研は、このような思いから第1回東北地域連携講座を「森里海連環学と沿岸管理~東北沿岸の復興をどう進めるか~」というテーマで開催することとした。
 場所は、京都会館会議場。開催日は、2011年7月16日。当日は祇園祭の宵山にもかかわらず、13時から18時までの5時間にわたって200人近い人々が参集し、講演に耳を傾け、熱心に討論に参加した。
 京大フィールド研社会連携教授であり、「森は海の恋人」運動を通して森里海連環学の実践に取り組んでいる畠山重篤さんが津波被害に遭われたことから、「森は海の恋人」運動の再興を応援するとともに、新しい社会づくりに向けて、森里海連環学の立場からどう取り組んでいくべきかを、本シンポジウムの基本的な目的とした。畠山さんを始め、現地からの報告を聞いた上で、これからの社会を担う多くの若者たちと討論し、さらに彼らが森里海連環学を通した東北復興に関わることを大いに期待して、講演会を開催した。多くの聴衆の関心を引いたが、残念ながら若者の参加は多くなかった。この講演と討論の集いは、日本財団からの助成金によってすべて賄われた。
 当日のプログラムと講師、演題は以下の通りである。

 プログラム(進行:佐藤 真行(京大フィールド研 特定准教授)
 開会挨拶:柴田 昌三(京大フィールド研 センター長)
 講演:尾池 和夫(国際高等研究所長・前京都大学総長)「2011年東北地方太平洋沖大地震」
    高柳 和史(水産総合研究センター本部 研究推進部長)「漁業復興へ向けての取り組み」
    浅利 美鈴(京大環境科学センター助教)「復興に向けた災害がれきとの闘い(現地からの報告)」
    畠山 重篤(京都大学フィールド科学教育研究センター社会連携教授・NPO「森は海の恋人」代表)「森里海連環と『森は海の恋人』運動の復興(現地からの報告)」
 討論:司会:向井 宏(京大フィールド研 特任教授)
    田中 克(国際高等研究所教授)・吉岡 崇仁(京大フィールド研 教授)・尾池 和夫・高柳 和史・畠山 重篤・浅利 美鈴
  まとめおよび閉会挨拶:山下 洋(京大フィールド研 副センター長)

年報9号  2012年10月 p.5