第2回時計台対話集会「森と川と海の対話-安心・安全な社会を求めて」

フィールド科学教育研究センター
副センター長 竹内 典之


 京都大学フィールド科学教育研究センター(京大フィールド研)は、平成16年7月に開催した第1回時計台対話集会「森と里と海のつながり-“心に森”を築く」に続く第2弾として、平成17年12月18日(日曜日)に京都大学百周年時計台記念館百周年記念ホールにおいて、第2回時計台対話集会「森と川と海の対話-安心・安全な社会を求めて」を開催しました。京大フィールド研は、森と川と海のつながりに人と自然の共存原理を求める新しい統合科学「森里海連環学」を創生し、安心・安全で持続的発展が可能な社会の再構築に寄与することを目標としています。この時計台対話集会は、京大フィールド研の取り組みを多くの人々に理解していただくための活動の一環として実施しているものです。

 第2回となる今回は、作家のC.W.ニコル氏による「森を育てて海を想う」、アウトドアライターの天野礼子氏による「“川仕事”も“森仕事”も」、牡蠣養殖業を営む畠山重篤氏による「汽水に生きる」、そして多忙ななかご参加いただいた尾池和夫京都大学総長による「地球社会の共存」の講演の後、日本経済新聞編集委員土田芳樹氏のコーディネイトによる参加者と講師による対話を行った。周知のように、作家のC.W.ニコル氏は、日本の自然を愛し、日本の森の再生を求めて自らも長野県黒姫山麓で「アファンの森」創りを進め、また、自然環境の大切さ、自然環境保全の必要を訴える多様な活動を展開されています。アウトドアライターの天野礼子氏は、長良川河口堰建設反対運動に立ち上がって以来一貫して日本の河川の再生に向けて活躍するとともに、近年は「川を再生するには森を生き返らせることが必要」と“森仕事”へ視野を広げて森の再生にも取り組まれています。宮城県気仙沼の牡蠣養殖漁師の畠山重篤氏は、「牡蠣の森を慕う会」の代表として「森は海の恋人」運動を精力的に推進するとともに、崩れ行く日本の豊かな渚域の保全に向けた全国規模での活躍をされています。また、尾池和夫京都大学総長は、著名な地震学者でもあり、京都大学の最高責任者としてまた自然科学者とし地球社会の共存に向けて積極的な取り組みをされています。日本経済新聞編集委員の土田芳樹氏は、森-里(川)-海の保全に深い洞察力を有し、昨年には5ヶ月かけて松尾芭蕉の歩いた「奥の細道」を追体験されています。

 安心・安全な社会の再構築は現代社会の大きな関心事であり、森と川と海のつながりは
その重要な自然的基盤です。現実社会で“森”と“川”と“海”の保全運動に先駆者として携わっておられる3氏と地震学者としても著名な尾池総長から話題提供を受け、森と川と海のつながりについて考えてみましょうとの呼びかけに多くの人々が応えて参加してくださいました。当日の京都は前夜の降雪が積雪として残り、寒くて足元の悪い日であったにも関わらず、参加者は350名にもおよびました。次世代を担う高校生・大学生・大学院生の参加者も多く、若い人々からの発言も活発で、実りの多い対話集会となりました。

ニュースレター7号 2006年3月 ニュース