古座川合同調査:第1回~第3回の概要報告

里地生態保全学分野 梅本 信也


 2005年初夏に、「古座川プロジェクト」リーダーの田中克センター長の発案で開始され、白山義久・瀬戸臨海実験所所長と梅本信也・紀伊大島実験所所長が現地サブリーダーとして展開してきた「古座川合同調査」(Kozagawa Project Combined Forces :FSERC/ KOPCOM)。紀伊半島南部の熊野灘に河口をもち熊野地方に源流を持つ全長56km の古座川とその流域ならびに串本湾域を、森里海連環学創生のためのモデルフィールドと捉え、センターが掲げる「社会連携」活動として認識しながら、通時的に適切な里域生態系に復元するための基礎資料を収集し今後の方策を探るべく、紀伊大島実験所を宿泊拠点にしての合同現地調査が定期的に行われてきた。フィールド研教職員はもとより、本学学生や院生、北海道大学和歌山研究林、大阪府立大学、中央水産研究所内水面研究部、和歌山県水産試験場ならびに林業試験場、南紀生物同好会、古座川漁協、七川漁協、古座漁協、清流古座川を取り戻す会、地元中学校教員、流域住民、ときにはマスコミまでが参加しての合同調査である。結果は毎回「古座川合同報告書」として纏められる一方、和歌山県内外のテレビや新聞、インターネットでも好意的に報道されてきた。

 第1回目の合同調査は2005年7月15日~19日に行われ、18名が参加した。初回記念として全員が水生動物調査法を学びながら、各自の専門調査も行った。古座川中流域にある巨大な奇岩「一枚岩」をバックにした写真表紙から始まり、9ページから構成される報告書の内容は、「古座川魚類相予備調査報告」、「古座川流域キノコ相予備調査報告」、「古座川文化圏予備調査報告」、「古座川エビ類予備調査報告」であった。

 第2回目2005年9月16日~19日に行われ、25名が参加した。初回調査の継続や新規調査など、参加したメンバーが各自の専門を生かしつつ行った。33ページから構成される報告書には、「第2回古座川合同・魚類相報告」、「第2回古座川合同調査・プランクトン相報告」、「第2回古座川合同調査・キノコ班報告」、「古座川プロジェクト・七川ダム下流域植物相調査報告」、「ダム建設とその後の植物相変容」、「第2回古座川合同調査・水質簡易分析結果報告」、「川の生物と付着藻類-古座川の付着藻類調査に向けて-」、「第2回古座川合同調査・水生昆虫班報告」が現地調査後に寄稿された。

 第3回目は川の水が冷え込み始める2005年11月26日~27日に行われ、10名が参加した。20ページから構成される報告書には、「魚族班調査報告」、「水質班(ダム湖)調査報告」、「七川ダム・プランクトン班調査報告」、「水質班(平井地区Ca 特別調査班チーム)報告」、「植物班・ヨシ属AFLP 分析報告」が寄稿された。

 以上紹介した古座川合同調査報告書は、手弁当で短期間の現地調査に基づく分析結果とは思えない重厚な内容である。回を重ねるたびに、流域での不適正な連環状態が浮き彫りになりつつある。なお、近日中にはセンターHP などで公開予定である。
 2006年2月1日には、古座川清流化を目指す、和歌山県議会承認の古座川流域協議会が正式に発足した。同月25~27日に予定されている第4回古座川合同調査は、あらたなる社会連携段階で実施され、流域ガバナンス形成での役割も更に重要となるだろう。

ニュースレター7号 2006年3月 研究ノート