全学共通科目(実習) 「暖地性積雪地域における冬の自然環境」

森林環境情報学分野 中島 皇


 本実習はフィールド科学教育研究センターが創設されてから始められた全学共通科目B 群(自然科学系科目)1単位の実習で、後期試験後の2月上旬に3泊4日(集中講義)で芦生研究林において実施されている。京都大学の学生は、一部の積雪地域(山陰・北陸・中部高地地方)の出身者以外は雪や氷に馴染みの少ない者が多い。近年レジャー等で経験は増えているものの、生活の中における或いは自然現象としての雪や氷に対する経験は非常に少ない。シラバスにあるように暖地性の積雪(山間)地域における冬の自然環境を体感すると同時に雪氷調査法入門を習得し、水が態を変えた雪や氷について理解を深め、その影響を考究することを目的としている。

 今年度の実習は暖冬・雪不足で実施が危ぶまれたが、実習メニューと場所を変更することで乗り切った。参加者は文(2)、理(2)、農(3・4)、総人(1)(数字は回生)の5名であった。例年なら15名の定員に倍近い応募者があり、キャンセル待ちまで出るのであるが、これもこの冬の異変である。1日目は芦生研究林へ到着後、幽仙橋まで車で入り(例年だと1以上の積雪がある。)、カンジキを装着しての歩行訓練を行った。ツボ足で歩くのに比べると、どんなに楽(ただ普段通りに大股で歩くと痛い目を見る。)かなどは体験したものでなければわからない。2日目は川に仕掛けておいた流出リター・水棲昆虫トラップの回収と収集した試料の分別やデッサンを行った。冬の渓流に多くの生き物が動き、色々な状態の葉が流れてきていることに、皆驚いていた。3日目は待望の雪が降る中、積雪調査を行った。本来なら条件の悪い中での調査は避けるべきであるが、フィールド調査というものがどれ程大変なものかを実感するためにも、天気予報とにらめっこをして設定した。幽仙橋より200m程高い内杉林道で70cmの積雪断面の観察が出来た。4日目はレポート作成と片付けで、午後には園部から山陰線で京都へ帰った。この実習の特徴の一つは、食事のメニュー作成から買い出し、調理、後片づけまで参加者が行い、「同じ釜の飯を食う。」ことである。また、TA の大学院生がフィールドや宿舎でサポートするとともに、夜にはそれぞれの研究紹介をすることも参加者の好奇心を刺激するようである。この冬は宿舎周辺の積雪がほぼ0で、本当の冬の芦生を十分伝えられなかったことは、少し残念であった。これも温暖化の影響か?最後に、北海道研究林で実施されている「研究林実習(2006年度からコードシェアの科目になっている。)」を受講すれば日本の暖地と寒地の雪や氷の実体験が出来ることを付け加えておく。

ニュースレター10号 2007年3月 教育ノート