上賀茂試験地冬の炭焼き体験会報告

森林環境情報学分野 中島 皇


 炭焼きは、かつて日本全国どこの山でも行われており、人口の多い大都市周辺の里山では、特に盛んであったが、昭和30年代後半のエネルギー革命とともに急速に姿を消して行った。現在では備長炭などの一部の炭以外は、ほとんど海外から輸入されているのが現状である。京都大学の芦生演習林でも、その最盛期には年間20,000俵近い炭が生産され、その量は当時の京都大学全体の年間使用量14,000俵をまかなって余りが出る量であったことが記録に残されている。

 上賀茂試験地で使用している炭窯は2005年に中根技術班長を中心に昔の炭窯跡を利用して作られたものである。炭窯作成の目的は、エネルギー革命以前には日本中の里山で行われていた炭焼きの体験ができるようにすること。また、農学部や試験地内で生ずるヒノキ間伐材の端材、樹木の剪定で生ずる端材、研究・実験端材、松枯れ被害木(薪として利用)の処分もできるようにと、一石二鳥をねらったものである。体験会は、炭焼きのテストを何回か行った後に、一般公開が出来る態勢が整えられたので、昨年から試験地の冬の催しとして開催されている。

 今年度は2月3日(土)に体験会が開催された。当日はこの時期としては暖かで、参加者は昨年同様ほぼ定員の21名、男女比は2:3で女性が少し多かった。午前10時から講義室で中島試験地長の挨拶及び試験地の概要説明、中根技術班長の炭焼きに関する説明が行われた。引き続いて全員で炭焼窯に移動し、2班に分かれ作業に取りかかった。午前中は、炭を窯の中から取り出す作業と丸太や竹を割ったり、切ったりする材料の準備作業を交代で行った。午後からは、材料を炭窯の中へ立て込む作業と色々な樹種の炭を燃やし、着火のしやすさや燃え方の違いなどを観察・体験した。最後に、焚き口で薪を燃やし、炭窯の煙突から煙りが出たことを確認して作業を終了した(通常、炭焼には試験地の窯で3~4日かかるため、体験会では前回の炭焼で出来上がっている炭を取り出し、新たに材料を入れ、火を付けるという工程で行っている。)。午後3時頃に講義室に戻り、アンケート記入後、閉会となった。アンケートには、「炭焼のしくみがわかった。」「貴重な体験ができた。」「炭焼の大変さがわかった。」などの感想が寄せられている。

 炭窯がそれほど大きくなく、参加者全員が工程を体験するためには20名が限度であるが、この体験会が試験地の冬のイベントとして定着していくことを願っている。

ニュースレター10号 2007年3月 教育ノート