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学生実習

京都大学「環境マネジメントセミナーB」実習報告

5月27日、京都大学大学院地球環境学堂・地球環境学舎・三才学林実習「環境マネジメントセミナーB」が行われ、留学生14名、日本人学生21名が参加しました。

この実習は、地球環境学に関する幅広い素養を身につけ、自らの力で地球環境の理解に必要なデータを収集する能力を養うことを目的とされています。5日間で、「森林」・「地域」・「土」・「動物」・「川」という5つのテーマについて、各1日ずつ実習を行い、

この日は「地域」をテーマに、芦生で農林業作業を体験しました。

学生は芦生わさび生産組合のワサビ圃場で作業を行うワサビ班と、芦生研究林事務所構内の竹林で作業を行う竹林班の2つに分かれ、午前と午後で入れ替わることで両方の作業を行いました。

ワサビ班では、作業に入る前に、芦生わさび生産組合の方々から芦生地域の人々とワサビの関係(狩りの安全や豊穣を祈るために正月から4月10日のわさび祭りまでワサビを食べない)の説明を受け、自然と深くかかわる地域の生活について学びました。

その後、組合の方々から指導を受けながらワサビの移植を行いました。

参加した学生からは、ワサビ生産の取組みに協力したいという積極的な意見や、移植したワサビの成長を確認するためにまた芦生を訪れたいという感想がありました。

竹林班は、芦生区に住み、林業に従事されている方がチェンソーで竹と樹木を伐倒する様子を見学した後、獣害によって衰退した竹林の回復を目指す整備作業を行いました。ま

た、研究林職員の指導を受けながら、竹用ののこぎりで伐倒された竹を玉切りする体験もしました。

休憩時間には、整備を行った竹林のかつての姿や、芦生区での生活における竹林との関わり、獣害に関する話を聞きました。参加した学生からは、竹林が回復した暁にはタケノコを食べたいという感想が多く聞かれました。

本実習の「地域」をテーマとしたパートを芦生で実施するのは、今年度から始めた試みです。ワサビの栽培と利用、獣害による竹林の衰退という、芦生に特徴的な事柄を扱い、芦生という地域を実感してもらえたと思います。今後はワサビ圃場の作業の継続と、竹林回復過程のモニタリングを行っていく予定です。

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学生実習

東邦大学「野外生態学実習Ⅱ」実習報告

2025年5月26-30日 東邦大学の学生実習「野外生態学実習Ⅱ」が行われ、16名の学生が参加しました。

27日は森林軌道、28日は上谷において、生物相の調査を行いました。生き物好きの学生が多く参加していたこともあり、上谷ではサンショウウオやマムシを見つけて熱心に観察していました。また、松岡講師の解説のもと、関西地域の森林の特徴や、シカ過採食による植生被害と排除柵による保全について現場を見ながら学びました。28日の午後は、技術職員の指導のもと長治谷のイヌカラマツ人工林で毎木調査を行い、毎木調査データの取り方を体験しました。

29日は、実際に芦生研究林の毎木調査データを使って解析に取り組みました。芦生研究林がこれまで取得した毎木調査データは膨大で、学生達は取り扱いに苦労していましたが、グループごとに考えたテーマに沿って解析を行い、最後には樹木の成長や多様性に関する立派な発表をしていました。

芦生研究林は生き物や植生などの点で東邦大学のある関東とは異なっているので、たくさんの経験が積めたと思います。この実習が将来の研究に役立つよう願っています。

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イベント

菌類ワークショップ2025

芦生研究林において菌類研究者と一緒にフィールド調査や研究議論を行うワークショップを開催します。
 大学院生を主な対象として、ワークショップへの参加者を募集します。初夏の研究林を菌類の目線からのぞいてみましょう。

概要

 菌類多様性研究の促進と若手研究者の育成を目的として、フィールド調査体験とディスカッションを行うワークショップを開催します。
 新進気鋭の菌類研究者に調査を行っていただき、そのプロセスを参加者に共有してもらい、また研究発表や参加者間の自由な議論を行います。
 今回は、菌類の中でも地衣類を中心とした菌類調査と、それらの多様性や系統、生態など幅広いテーマでお話ができると思います。また、芦生研究林や北海道研究林など、フィールド研施設の紹介や調査・研究の相談なども行えます。
 フィールドである芦生研究林は、関西有数のブナ林やトチ・カツラの巨木からなる畦畔林などを含む原生的な冷温帯林が広がっています。研究林内は1000種を超える植物種が記録されており、京都丹波高原国定公園の第1種・第2種と区別地域にも指定されています。自然についての詳細は概要ページをご覧ください。

日時
2025年7月19−21日

講師
坂田歩美(千葉県立博物館)、橋本陽 (理研BRC)、升本宙 (信州大)
スタッフ:松岡俊将(京大フィールド研 芦生研究林)、杉山賢子 (京大フィールド研 北海道研究林)

主な対象
全国の大学院生定員:10名程度

参加費
無料 (ただし、芦生研究林までの交通費、宿泊費、食費は実費負担)

宿泊
芦生研究林の宿泊施設を利用(シーツ代550円、宿泊費300円/一泊、学生は宿泊費無料)。
詳細は研究林ホームページの施設参照。

・スケジュール案(詳細は変更になる可能性があります)
7月19日 11時 芦生研究林事務所前に集合

19日午後と20日終日 研究林内で調査

20日 夜 講師による研究発表と参加者の研究のフラッシュトーク、試料処理の見学と交流会

7月21日 朝 解散

申し込み
 担当教員の松岡(matsuoka.shunsuke.8e*kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください))までメール
 同一研究室内で複数人の参加希望がある場合は、集約して代表の方から連絡してください。

アクセス
 ホームページをご確認ください。

 7月19日と21日はJR園部駅-芦生研究林間の自動車送迎を行う予定です。
 人数に限りがありますが希望する方は申し込みの際にお知らせください。

その他
 参加者は各自でイベントや野外活動の保険に加入した上でご参加ください。



			
		
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お知らせ

入林禁止期間に関するお知らせ/Notice of forest entry prohibition 終了しました/Finished

ご協力いただき、ありがとうございました。
Thank you for your cooperation.

日頃より研究林の教育・研究活動にご理解とご協力をいただき、ありがとうございます。
今年度は積雪量が多かったため、林道除雪や倒木処理に時間がかかることが見込まれます。
林道整備作業時の安全確保のため、以下の期間は入林を禁止します。

入林禁止期間:2025年4月18日(金)まで

なお、作業の進捗状況によっては期間を延期する可能性がありますので、ご承知おきください。
延期の場合は、判断ができた時点で再度メールをお送りいたします。
また研究林全域にて、銃器を用いた柵内のシカ捕獲を4月30日(予備日5月2日)に行うことが決まりました。

研究林全域入林禁止日:4月30日(水)、5月2日(金)

共同利用者の方等、関係すると思われる方にもご周知願います。
ご不明な点がございましたら、芦生研究林までお問い合わせ下さい。
ご不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

Thank you for your understanding and cooperation in the educational and research activities of the Ashiu Forest Research Station.
This year, due to the heavy snowfall, it is expected that it will take time to clear the forest roads and deal with fallen trees.
To ensure safety during the forest road maintenance operations, entry into the forest will be prohibited during the following period:

Forest Entry Prohibition Period: Until Friday, April 18, 2025

Please note that depending on the progress of the work, the entry prohibition period may be extended. If an extension is necessary, we will send another email as soon as the decision is made.

Deer hunting using firearms will be held on April 30 (reserve date: May 2) in the entire forest. You are not allowed to enter the forest regardless of the area.

Forest Entry Prohibition Dates: Wednesday, April 30, and Friday, May 2.

Please inform your co-users and others who may be involved.
If you have any questions, please contact the Ashiu Forest Research Station.
We apologize for any inconvenience this may cause and appreciate your understanding.

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学生実習

京都大学「森里海連環学実習III :暖地性積雪地域における冬の自然環境と人の暮らし」実習報告

2024年度の森里海連環学実習Ⅲが2月18日から2月20日の日程で、芦生研究林において行われました。参加した学生は京都大学農学部、法学部、総合人間学部、工学部、理学部の1〜4回生9名でした。この実習では、冬、特に積雪に注目し、地球温暖化・人口減少・シカの食害などの課題を学び、それらの解決にむけて新たな森と人とのつながりについて議論することを目的としています。

実習初日は京都丹波高原国定公園ビジターセンター(以下、ビジターセンター)の見学や多雪地域での生活の様子を見学しました。

午前はビジターセンターの見学を行い、美山観光まちづくり協会(以下、美山DMO)の職員の方から、美山町の人口減少とそれに伴う様々な課題、そうした課題がある中でのまちづくりについて講義を受けました。

午後は佐々里地区に移動し、まず、中山間地域が直面する買い物の不便さを解消する方法の一つである移動販売車を見学し、お話を伺いました。次に、地域住民の方から、佐々里地区の歴史、現状や生活についてお話を伺いました。また、集落内の神社や家屋も見学しました。

佐々里での見学の後は芦生に移動し、「冬の植物・食害」、「温暖化と菌類」について講義があり、夕食をはさみ、「冬の野生動物の生態」というテーマで講義が行われました。

実習2日目は冬季の森林散策と栃へし(栃の実の皮を剥く作業)作業を行いました。

午前は、スノーシューを履いて林道を歩き、樹木や植物などの解説を交えながら、3時間ほどフィールドワークを行いました。前日からの大雪のために野生動物の痕跡を見つけるのには苦労しましたが、樹木の冬芽やシカの食痕など、様々なものを観察することができました。

午後は芦生山村活性化協議会の方を講師としてお招きし、その指導の下、栃もち作りの工程の一つである、栃へし作業を行いました。約2時間半の栃へし作業を終えたところで、栃餅をいただきました。また、この日の夕食は自炊して美山産鹿肉ときのこのカレーを食べました。

実習3日目は研究林資料館と美山かやぶきの里の見学、美山町の課題解決についてのディスカッションでした。

午前は研究林資料館を見学した後、美山かやぶきの里に移動して集落を見学しました。

午後はビジターセンターにて、美山DMOの職員の方から、Iターン者として美山町に来られた経緯や現在のお仕事についてお話を伺いました。大学卒業後、就職してまだ1年という学生に近いご年齢だったこともあり、その後、「美山町の抱える課題解決について学生としてできること」をテーマにグループディスカッションを行いました。グループディスカッション終了後、京都への帰路につきました。 今回の実習を通して、たくさんの地域の方によるご支援・ご協力を賜り、より芦生らしい実習を行うことができました。研究林教職員だけではなく地域の方とも交流を行うことで、冬山でのフィールドワークのみならず、地域生活や文化や課題といった幅広い知見を学生達は得られました。学生からは、「講義だけでなく、フィールドワークや地域の人との交流を通じて、暖地性積雪地域の自然環境の現状や、山村地域の実情について、実感を持って学ぶことができた」、「ディスカッションが多く、いろんな意見、考えが聞けた」といった感想がありました

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学生実習

ボゴール農科大学「Winter Program」実習報告

1月23日にボゴール農科大学(IPB University)の学生14名、教職員3名の計17名が芦生研究林で実習を行いました。これは、京都での1週間にわたるボゴール農科大学 Winter Programの一環で、芦生研究林にて冬の日本の森を学ぶ事を目的として実施されました。

実習は、鈴木華実助教による概要説明から始まり、その後、林内を約1時間散策し、最後に斧蛇館を見学しました。例年よりも積雪が少ない芦生でしたが、参加者ほとんどが雪を見るのは初めてであり、高揚した気持ちを抑えきれず、まるで子供のように無邪気に楽しんでいました。芦生の自然の美しさや雪の景色を堪能できたことは、非常に貴重な体験だったと思います。参加者にとって特別な思い出となったことでしょう。

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フィールド

「菌類ワークショップ2024」開催報告

10月12-14日に菌類ワークショップ2024を開催しました。本ワークショップは、菌類多様性研究の促進と若手研究者の育成・交流を目的に、教育関係共同利用拠点「人と自然のつながりを学ぶ森林フィールド」の事業の一環として開催するものです。昨年度に引き続き2回目の開催となる今年は、若手研究者の講師3名と全国の大学・大学院生7名の参加者が集まりました。

 講師として、橋本陽 (理研BRC)、山本航平 (栃木県立博物館)、升本宙 (信州大学)を迎え、きのこ・地衣類・微小菌類といった幅広いグループの菌類について、観察のポイントや最新の研究トピックについてご紹介いただきました。

 日中のフィールドワークでは、講師から探索や観察のポイントを教わりつつ、各自が研究対象の菌類を採取しました。夕方、フィールドから戻った後は、標本の顕微鏡観察と講師の講義、参加者の研究紹介を行いました。特に、参加者の研究紹介では、各発表に対して講師や他の参加者から多様な視点のコメントが挙げられ活発な議論が交わされました。参加者にとって、研究の展開や新たな研究の方向性を考えるきっかけになったのではないかと思います。

また、今回のワークショップでは、昨年参加された講師や参加者から、前回採取した標本に関する研究成果の報告もありました。ワークショップが参加者の研究につながったことを嬉しく思います。今回採取された標本にも、未記載と考えられる種や芦生新産種が含まれます。今後の解析によって、芦生研究林の菌類相の解明が進むことが期待されます。

 フィールド研の研究林・試験地を利用したワークショップは、対象生物やテーマを検討しながら今後も継続的に開催する予定です。2025年度の菌類ワークショップは夏に開催予定です。今後の開催に関しては、フィールド研や芦生研究林のホームページやSNSで情報発信します。

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学生実習

京都府立北桑田高校「京都大学芦生研究林見学実習」実習報告

 11月14日に京都府立北桑田高校の「京都大学芦生研究林見学実習」実習が行われ、当日は21名の生徒が参加しました。北桑田高校は京都府内で唯一の林業に関する専門学科(京都フォレスト科)が設置されている高校です。この実習は「芦生の森について、講義を受け、実際にその森に入ることで地元地域の有する貴重な森林資源を体験的に学び、専門学科の学びを深める機会とする」ことを目的として行われました。

 当日は入山前に資料館で石原林長による、芦生研究林の概要説明が行われました。杉尾峠まで林道を約45分も車で走ることや、約4,200haという芦生研究林の広さに生徒たちは驚いていました。

 林内では、杉尾峠から長治谷までの上谷エリアと大カツラの見学を行いました。上谷エリアでは宮城技術職員が解説を行い、安全確保を山中技術職員が行いました。芦生の山を特徴づけるアシウスギ・ブナ・トチノキの解説、獣害による被害状況の解説、人と森の関り(木地師)など、幅広い解説を行いました。生徒たちは、解説を聞きながらメモを取ったり質問をしてくれたりと、非常に熱心に学んでいました。

 大カツラの見学では西岡技術職員による解説を行いました。芦生研究林に来る数週間前に、屋久島に見学に行かれていたようですが、屋久杉にも劣るとも勝らない大カツラを前に歓声が上がりました。

 実習後の生徒代表のお礼の挨拶では、「林業の専門学科といったこともあり、原生的な森の姿をみることは非常に少なくとても良い経験になりました。今日の経験を今後の進路にも活かしていきたいです。」という言葉をいただきました。生徒たちの言葉から、実習の目的を達成することができたことが伝わりました。

 林業では木を植える際の目安として「尾根マツ谷スギ中ヒノキ」と言い、スギは谷部に植えるのが良いとされています。しかし、芦生ではこの言葉とは異なり、天然のスギの多くは尾根付近に自生しています。これは積雪量に起因するのですが、実際に森を見て、自然から学ぶべきことは非常に沢山あります。

 卒業後には生態系の在り方などについても考えられる、広い視野を持った森林・林業技術者等になって活躍されることを期待します。

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学生実習

京都大学「ILASセミナー:森での感動を科学する」実習報告

2024年9月3日から4日の日程で、京都大学の1回生を対象としたILASセミナー「森での感動を科学する」が開催され、9名の学生が参加しました。

この実習では、森林環境が人間に与える精神的な影響を研究することをテーマに、学生が調査を計画、実施するものです。学生たちは森の木々や水、生き物などを見たり触れたりした時の表情を撮影し、AIによる表情分析を使って感情の変化を調べていました。

 ユニークな内容でしたが、学生たちはグループごとに仮説を立て実験し、データを解析して、考察するという研究の基本を実習を通じて学んでいました。

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イベント

京大ウィークス2024 芦生研究林一般公開 実施報告

10月20日に京大ウィークス2024 芦生研究林一般公開を開催しました。多数の応募をいただいたため抽選を行い、35名の方々に来ていただきました。

参加者は、秋晴れの少し冷たい空気のなか、教職員の解説を受けながら森林を散策しました。散策コースは2コース設定しました。原生的な植生景観を見ることができる「原生林散策コース」では、カツラやトチの巨木を見ながら由良川源流付近を散策しました。また、芦生の人と歴史を体感できる「森林軌道散策コース」では、芦生研究林やその歴史に触れながら森林軌道沿いを散策しました。参加者からは「カツラの大木を見ることができて良かったです。」「教職員の解説が分かりやすく、楽しい時間が過ごせました。」「芦生の歴史的背景の話が面白かった。」等の感想が寄せられました。どちらのコースも、参加者の方は芦生の自然や教職員の解説と対話を楽しんでいただけたようです。

芦生研究林は都市部からは遠く、なかなか来ることができない方も多いと思いますが、研究林の自然を堪能していただけたのではないでしょうか。