北海道研究林における社会連携

北海道研究林 舘野隆之輔


 京都大学には、北は北海道から南は鹿児島まで、全国に様々な隔地施設がありますが、北海道研究林は北海道にある京大唯一の隔地施設です。標茶町と白糠町にあるそれぞれ1,446ha と880ha の森林を活用して、フィールド実習を年間で約4週間行うほか、道東のフィールド研究の拠点の一つとして、様々な研究プロジェクトを受け入れています。今回は、北海道研究林で行っている社会連携活動について紹介します。
 従来より北海道研究林主催で行っていた標茶町民向けのミニ公開講座を発展させる形で、平成24年度、25年度の夏休み期間中に、小学生、中学生、高校生を対象とした科研費研究成果のアウトリーチ活動を行いました。これは日本学術振興会の研究成果の社会還元・普及事業「ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~」の一環です。また秋には、白糠町民向けのミニ公開講座を発展させる形で、大学主催の事業である「京大ウィークス」の一環として、自然観察会やネイチャークラフトなどを平成24年度から行っています。このように社会連携事業を充実させ、従来よりも広報活動に力を入れてきたことによって、町内からの参加者だけでなく近隣の市町村からの参加者が増える傾向にあります。
 町内の教育委員会や小中学校との共催事業もいくつか行っています。標茶町沼幌小学校との共催の「木工教室」では、子供たち自らがデザインした様々な木工作品を作ったり、竹馬作り、草木染めなど、毎年メニューを変えて行っています。標茶町教育委員会との共催の「しべちゃアドベンチャースクールジュニアリーダー養成講座」では、町内の小学生を対象に、スノーシューを着用して冬の森林や樹木の様子、雪上の動物の足跡などの観察を行っています。また町の中心部にある標茶小学校の遠足では、毎年小学校3年生が小学校から研究林まで歩いてやってきて、森の植物や動物について学んで帰ります。この遠足は30年近く続く伝統行事で、標茶町市街地で育った人のほとんどが一度は研究林を訪れていることになります。
 北海道研究林の近隣には、釧路湿原国立公園や阿寒国立公園などもあり、官庁や地方自治体、NPO 法人などによる自然観察会やネイチャークラフトなどの催しが多数開催されていますので、参加者の確保にはいつも苦労しますが、今後もフィールド研ならではの独自の企画を行っていければと考えています。

ニュースレター32号 2014年2月 社会連携ノート