実習報告2014「暖地性積雪地域における冬の自然環境」

2015年2月6日~9日、芦生研究林標茶区において、全学共通科目「暖地性積雪地域における冬の自然環境」を実施しました(5人)。

報告

森林情報学分野 講師 中島 皇

 実習(全学共通科目の後期集中講義)は2015年2月6日~9日に3泊4日の日程で行われた。大きなテーマは「固体の水」である。詳しくはシラバスに書かれてあるので、ご参照頂きたい。
 参加者は5人(文1(1)、理2、医1(1)、工1:カッコは女子(内数))で比較的少なかった。東京・名古屋・京都・福岡などの里(都市域)にある住宅地で暮らし、雪とか森林(山)に余り縁のない地域からの出身者たちである。彼らの他にTA(Teaching Assistant:先輩としての助言・補助及びフィールドでの安全確保等)3人が加わる。今年は本実習の経験者2人と中国東北部からの留学生(芦生をフィールドとして鹿に関する研究を実施)の、いずれもM1の大学院生が担当してくれた。
 初日はアクシデントもなく全員JRバスの周山駅に集合した。付近には数日前に降った積雪が残っている。少し離れたスーパーの駐車場まで歩いて、芦生研究林からの迎えの車で出発した。道中の自然環境や人間の暮らし(深見トンネルの南丹市側出口にある融雪装置や大きなアンカーボルト、平水時に由良川を渡れるように設置されている沈下橋など)を確認しながら、芦生に到着した。各自が準備してきた昼食の後、クラブ(宿泊所)使用法の説明を受け、長靴とカンジキを装着して歩行訓練と宿舎周辺の積雪に着目した自然観察及び雪の造形を写真に撮ってくるプログラムが、薄日のさす中スタートした。夕食後のセミナーでは芦生研究林の概要説明を受けた後、午後に各自が撮影してきた写真の発表会が開かれた。
 2日目。天気は上々のようで、青空。昼食の握り飯を作って内杉谷の自然観察に出発。今日は1日雪の上にいて、往復約7kmの林道を歩くことになる。数10cmの積雪上を歩く感触はどうであろうか。林道の橋に発達する雪庇などは雪国ならではの光景である(写真)。内杉谷ゲートで小休止。雪崩跡を実際にスコップで掘って状況を実体験し、積雪期の台杉を観察しながら幽仙橋へ。昼食後、幽仙谷の量水堰を見学に行き、流出物を採取するネットを回収してきた。天気も良く、雪とフィールドを十分堪能した1日であるが、慣れない雪上の歩行には少し疲れ気味。夜のセミナーはTAの研究紹介と幽仙谷で回収した流出物の中にいる水生昆虫と葉のデッサン。
 3日目はクラブ周辺で積雪調査実習と便利な移動手段であるスノーモービルの試乗に挑戦した。積雪層の観察は参加人数が少ないので一人一人じっくり見られたはずである。昼食は食堂でパスタをゆでて食べた。お昼休みも十分で午後からも班を交替して実施した。夕食は皆でワイワイ言いながらお好み焼きを沢山作って満腹になった。昨日の疲れを癒しながら勉強した1日。
 最終日は班毎にレポート作成し、それを発表した。各自の感想文、アンケートそして宿舎の片付けと掃除をし、昼食後みぞれ混じりの降雪に見送られながら、芦生研究林の車でJR山陰線の園部駅まで帰っていった。2時間もすれば京都市内の喧噪の中に居るはずだ。