日本プランクトン学会論文賞 受賞

2005年3月27日、河村 真理子氏ほかの共著論文が、日本プランクトン学会論文賞を受賞しました。


 この度、2005年度日本プランクトン学会総会(2005年3月27日、東京海洋大学)において、瀬戸臨海実験所の大学院生と教員を含む計5名による共著論文(沖縄島産ハブクラゲの平衡石輪紋と成長に見出された関係)が日本プランクトン学会論文賞に選ばれた。第一著者の河村 真理子氏が代表して授賞式に出席し、学会長の上 真一教授から授与された。

 河村 真理子・上野 俊士郎・岩永 節子・大城 直雅・久保田 信 (2003)。The relationship between fine rings in the statolith and growth of the cubomedusa Chiropsalmus quadrigatus (Cnidaria: Cubozoa) from Okinawa Island, Japan. Plankton Biology and Ecology 50 (2): 37-42。

 本論文は、沖縄県で“海洋危険生物”の一つとされるハブクラゲについて、傘サイズと平衡石に年輪状に形成される輪紋数の関係を解析することによって、野外でポリプからクラゲへ変態し海中へ遊離する時期とクラゲの成長速度を推定し、特に遊離期が季節的な水温上昇期とほぼ一致することを示したものである。
 クラゲの成長曲線解析から、平衡石の成長は非常に安定しており、齢形質として重要な特徴の一つを備えることが明らかになった。また、日輪と推定される平衡石輪紋の中心から数えて5~10本目に存在する1本の濃輪紋は、ハブクラゲの体内環境やそれをとりまく環境に大きな変化があったときに形成されたと考えられ、クラゲに変態完了して遊離する際に形成されたと推定された。傘の高さと輪紋数の関係はlogistic曲線に、平衡石の長さと輪紋数の関係はGompertz曲線によく適合した。クラゲの平衡石輪紋を観察した報告は、本論文で2例目であり、生態学的調査の困難な立方クラゲ類において平衡石輪紋の高い有用性を示した。
 なお、ハブクラゲの研究調査は、沖縄県衛生環境研究所を中心に継続的に実施されており、季節的消長、港湾内でのクラゲの行動、クラゲ毒の化学的性状などが解明されつつある。