2005年8月23日 久保田 信助教授が出演したテレビ番組が放送されました。
関西テレビ
「FNN スーパーニュース」
*田辺湾口のミドリイシ類の大量死のフジTV取材
稀な現象として、京都大学瀬戸臨海実験所北側の通称”北浜”沖の2岩礁から洞門までの岩礁にかけて、約100mX50mの範囲の定区域でのシュノ-ケリング観察により、295群体中(サイズは子供のこぶし大から最大長径80cm)、わずかに9群体のみがろうじて生残しており、97%もの高死亡率であった!ミドリイシ類は、一般にテ-ブルサンゴやエダサンゴといわれる仲間で、南西諸島などの珊瑚礁景観を代表している。和歌山県田辺湾口の岩礁には石珊瑚類が少なくとも数十種が生息する中で群体数も多く目立つのがこの類である。田辺湾は、ほぼ西方に口を開いた比較的大きな湾だが、湾口部中央でも水深が30mほどしかない浅海で太陽光もよく入射し、湾口岩礁が拡がっており、ここには水深数mまでの各所に、群体の長径が最大1mほどに達するミドリイシ類が、総数で1000群体をゆうに越え数種が混在しているのを観察している。瀬戸臨海実験所水族館でも、例年、飼育展示している。
死亡の原因について:2005年の冬季の水温が過去12年間で最も低下したことが京都大学防災研究所白浜海象観測所の長期デ-タリストで記録されている。田辺湾口中央部に設置された観測地点の水深5mの1日ごと平均水温の変化をみると、2005年は、13.9℃以下に低下した時期が2月から3月にかけて2度もあった(2月初旬の連続6日間と2月24日からの連続7日間で、前半の最低が13.1℃、後半が13.3℃)。ミドリイシ類の生息する岸辺では、これよりさらに水温は下がっているので最寒季の低水温に耐え切れず凍死したと推定される。加えて、2004年には台風が何度も紀伊半島に接近・上陸し、暖水温季にシュノ-ケリング観察ができないことが度重なった異例の年で、繰り返す強風波浪により海底より砂泥が巻き上げられ、ミドリイシ類の呼吸を阻害し弱らせた可能性も高い。これに追い討ちをかけた低水温によりいっきょに大量死が起こったのであろう。なお、天敵であるシロレイシガイダマシやオニヒトデは田辺湾では大発生をしておらず、食害の影響は考えられない。
2005年8月23日(火) 16:55~19:00(約5分間)