ポケゼミ報告2003「海洋環境と生物資源」

フィールド科学教育研究センター 教授 山下 洋

2003年7月11~13日
 京都大学農学部において5回の講義を行い、フィールド科学教育研究センター舞鶴水産実験所において2泊3日の実習を実施した。農学部、法学部、理学部、総合人間学部から10名が受講し、うち9名が講義、実習ともに皆勤であった。
 講義は以下のように進めた。

第1回目:多くの魚種において資源量が大きく年変動し、それが環境の変動と密接に関係していることを、マイワシ、ニシン、ヒラメ、プレイス(ヨーロッパ産カレイの1種)などを例に紹介した。
第2回目:魚類の資源変動の主要因が初期減耗であること、おもな初期減耗要因として飢餓、被食、それ以外(卵・仔魚の輸送など)があること、及び飢餓に関する仮説を紹介した。
第3回目:被食に関する仮説を紹介した。
第4回目:その他の初期減耗要因について講義を行った。また、日本産ヒラメやカレイ類の初期の生き残りと成育場環境との関係に関する最近の研究例を紹介した。
第5回目:天然資源の生き残りと環境変動との関係を要約し、それを基礎に栽培漁業の概念と原理について説明した。また、わが国における栽培漁業の現状と将来展望について講義を行った。

 フィールドにおける実習は以下のように進めた。
7月11日(金):当初の予定では夕刻に全員が舞鶴に到着し、その後ガイダンスを行うつもりであったが、試験中のため到着が大幅に遅れ最後の一人が到着したのは午後10時であった。
7月12日(土):天候が不順で朝は霧雨が降っており、予定を変更して実験所内で実習を行うことも考えた。しかし、参加者の多くがフィールド実習を希望したので、三方海岸、小橋海岸において実習を行った。水産実験所助手の益田玲爾さん、4回生の松田克洋君に指導を手伝ってもらった。三方海岸では参加者全員で小型桁網とシラス網を曳網した。小型桁網では、講義において頻繁に名前が登場したヒラメやマコガレイの稚魚が多数採集された。参加者は、これらが沖合の産卵場から成育場へ至る浮遊期の初期減耗期を生き抜き、無事着底成育場に到達したことを実感した。一方、シラス網では、メバル、メジナ、ボラなどの稚魚が採集され、1m程度の水深の砂浜においても、海底(桁網で採集される種類)と水中(シラス網)では魚類相が大きく異なることが確かめられた。その後、水中メガネ、シュノーケル、フィンをつけて、スキンダイビングによる水中観察の練習を行った。曇りでしかも気温が25℃、水温20℃とかなり寒かったため、途中で男性の学生は全員リタイアしたが、女性は4人中3人までが隣接する小橋海岸岩礁域での水中観察まで参加し、水温耐性に大きな性差があることがわかった。
7月13日(日):午前中、関西電力が運営する宮津エネルギー研究所水族館(丹後魚っ知館)を見学した。展示飼育水槽の裏側の飼育設備を見学し、餌の準備や種ごとに異なる飼育方法などについて詳細な説明を受けることができた。その後、西舞鶴駅で解散した。

 反省点
 講義の内容と実習の内容との連環についてもう少し工夫する必要がある。また、可能であれば、磯浜における採集だけでなく調査船による環境観測と生物採集も行いたい。実習を夏休み前の週末に行うか夏休み中に行うかについて再検討する必要がある。

- 実習の様子 -