ILASセミナー報告2017「貝類の不思議」

基礎海洋生物学分野 助教 中野 智之



 2017年5月4日(木)から7日(日)にかけて、和歌山県白浜町にある瀬戸臨海実験所を拠点として、ILASセミナー「貝類の不思議」を行った。このILASセミナーでは、日本人にとってなじみの深い貝類について、その多様性の高さや、生態、形態の美しさなどの理解を深める事を目的とした。受講生は、総合人間学部2名、工学部2名、法学部1名、農学部1名の合計6名が参加した。
 初日は、瀬戸臨海実験所の研究棟や宿泊棟の案内から始まり、実験所に併設された白浜水族館において、貝類を含めた海洋生物の観察、バックヤードの見学を行った。バックヤードから水族館を見学する機会はそれほど多くなく、参加者にとっては生き物の飼育や展示の工夫などを裏側から観察し、非常に興味深い体験だったようである。夜の水族館では、ナイトツアーを行い、夜に活発に活動を始めた生き物の観察を行った。
 2日目は、院生に手伝ってもらいながら、コモレビコガモガイ、ヒメクボガイ、ケブカガニを用いた捕食実験を行った。コモレビコガモガイというカサガイの1種は、子供の頃にヒメクボガイの貝の上にくっついて生活しているのだが、それにどのような意味があるのかを探る実験である。今回は、ヒメクボガイにくっついている事で、カニからの捕食率が下がるのではないか?という事を確かめる実験を行った。
 3日目は、白浜町にある番所崎の海岸でコドラート調査を行った。例年、実習生が数を数えるのに苦労する数mm程度のチビアシヤもたくさんおり、1,000個体を超える区画もあり、実習生を悩ませた。午後からは貝類やイカの形態観察および解剖を行った。その際には、解剖図と比較しながらそれぞれの体の構造の理解を深めた。特に、貝類のオスとメスの違いなどを知り驚いていたようである。夜には、解剖で使ったものや解剖で使用しなかったものも含めて、安全に食べられるものは食材として使用した。
 最終日には宿泊棟、実習室の掃除をし、アンケートとレポートの提出をしてもらい解散とした。参加者達は普段何も気にせず食べていた貝類の体の構造や、貝類の奥深さを知る事で非常に満足してもらえたようである。