ポケゼミ報告2010「豊かな森をめざして!」

森林環境情報学分野 芝 正己 准教授


 2010年度新入生向け少人数セミナー“豊かな森をめざして!: The Way to a Richer Forest”は,例年のスケジュールとは異なり,5月15日(土)に終日の集中講義,翌週の5月20日(木)と21日(金)の両日の芦生研究林での野外実習を行った。今回の受講生の構成は,法学部(3名), 経済学部(1名), 文学部(1名), 農学部(3名), 理学部(1名)の計9名(男性3名,女性6名)であった。
 本講義の目的は,地球規模で問題となっている世界の森林の状況,日本での森林の保全・利用の現状を対比させながら,環境-経済-社会面からみた森林資源管理のあるべき姿を分野の異なる受講生全員で模索議論することである。21世紀に向けて森林を持続的に管理し,その多面的な機能を発揮させるためには,従来の専門領域に止まることなく,異分野間の連携を図ることが必要であり,そのためにも,隣接する領域やこれまで無関係だと考えられてきた分野についての正確な知識の習得が求められている。その具現化として「森里海の連環」を教示しつつ,以下の内容構成で解説した。

講義 1:諸外国の森林・日本の森林の特徴について
講義2:森林の利用と保全に関わる問題点について
講義3:新たな森林の管理評価- 森林認証・ラベリング制度
講義4:総合討論
野外体験実習 5月20日(木)~21(金) 芦生研究林

 芦生研究林での野外実習(受講生8名,TA1名)の初日は,午前10時にJR園部駅西口に集合,研究林のマイクロバスで「園部・日吉:郊外の土地利用や森林風景」,「美山町:由良川沿いの景観と土地利用,茅葺きの里」等を順次見学しながら研究林までのほぼ1時間半のコースを移動した。研究林構内での昼食後,芦生研究林の技術職員の支援を得て,内杉谷から長冶谷までのコースを移動しながら,「暖温帯林から冷温帯林への森林の変化」,「シカの食害地・クマ剥ぎ木」,「カシノナガキクイムシ被害木」,「渓畔林の植生」等を観察した。翌日は,朝食後,由良川本流に沿ったトロッコ軌道敷を樹木識別行いながら,灰野集落地跡まで散策し,昼食後,後片付け・レポート作成後,前日の逆コースを経てJR園部駅で解散した(17:00)。
 例年より一日少ない実習期間となったが, 初めて芦生を訪れた受講生に対しての芦生のスタッフの皆様の親切な指導, TAとして参加してくれた大学院生の施設利用や食事の準備等のきめ細い補助等,今回も多いに助けられた。皆さん,本当に有難うございました。わずかな芦生での滞在であったが,フィールドでしか得られない何かを受講生全員が感じ取ってくれたような気がする。彼らのこれからの学生生活に期待したい。小生にとって,今回が最後のポケゼミとなったが,最高の思い出となった。深謝!