機械学習による世界の気候パターンの分類に成功 / VARENN: Graphical representation of periodic data and application to climate studies

2020年7月6日、伊勢武史准教授と大庭ゆりか連携助教が執筆した論文が、イギリス・ネイチャー社の国際学術誌「npj Climate and Atmospheric Science」にオンライン掲載されました。

Takeshi Ise and Yurika Oba
VARENN: Graphical representation of periodic data and application to climate studies
(VARENN:周期を持つ時系列データをグラフィック化する技法とその気候学への応用)
npj Climate and Atmospheric Science, 3:26.
DOI: 10.1038/s41612-020-0129-x

(概要)
機械学習による世界の気候パターンの分類に成功 ―30年間の気候データを画像化して深層学習で識別―

世界の気候を理解しパターン化することは、気候変動の影響が懸念される現代において特に重要なことですが、物理学の法則にのっとって現象を理解しようとするボトムアップ型の研究では限界がありました。気候という現象に影響を与える要素は無数にあり、またカオス的な挙動を引き起こすあまたのフィードバックが存在するからです。これらの要素のすべてを明示的な数式で表現することは困難です。そこで、京都大学フィールド科学教育研究センターの伊勢武史准教授、学際融合教育研究推進センター森里海連環学教育研究ユニットの大庭ゆりか特定助教らの研究グループは、ブラックボックスであるディープラーニングの特徴を逆手に取り、トップダウン型の研究を行うことで、気候をつかさどる物理現象の数式を用いずに、気候パターンの分類に成功しました。ある30年間の気候に関する8つの変数(月別の気温・降水量・湿度など)から最大3つの変数を選び、それをデジタルカラー画像を構成する赤・緑・青の3つのチャンネルの値に変換します。これを合成してできる2次元画像を何万枚も作成しディープラーニングで学習させることによって、次の10年間の相対温度変化を予測できるようになりました。

研究プロジェクトについて
本研究は、科研費(基盤B)および(公財)日本財団と京都大学の共同事業「森里海連環再生プログラム」の研究として実施されました。

<研究者のコメント>
私たちが革新的な新技術であるディープラーニングを積極的に活用している理由は、研究者としてのベストを尽くして、環境問題・社会問題の解決に貢献したいと願っているからです。技術を開発することがゴールではなく、これをツールとして活用してさまざまな問題を解決しなければなりません。気候などの時系列データを分析するツールをひとつ増やすことができたので、他の研究と積極的に比較や統合を進めていきたいと考えています。 (伊勢武史)