RE:CONNECT(リコネクト)プロジェクトの始動

森里海連環学教育研究ユニット 研究プログラム長/森林育成学分野 准教授 伊勢 武史

 RE:CONNECT 事業の目的は,森里海連環の解明と,それに基づく人と自然の関係性の再構築であり,海洋・河川・里山などの環境保全のため有効な解決策の提案を目指す。人工知能やビッグデータ統計など最先端の情報科学技術を駆使し,従来は困難だった観測や解析を実現することが本研究の特徴である。

「for からwith」へ
 これまでのサイエンスは,社会や環境の「ために」何かをしてあげる,つまり「for」というマインドセットを持つのが常であった。それは一定の責任感を科学者に与えるという意味では効果があったが,その「上から目線」は,しばしば社会情勢との乖離をもたらすことが指摘されてきた。
 対してRE:CONNECT 事業では,科学者が市民と「ともに」,つまり「with」の姿勢でサイエンスを遂行し,その結果を用いた環境保全を実現することが特徴である。そのためにシチズンサイエンスの積極的導入を進めている。シチズンサイエンスは,市民ボランティアが収集に協力して得られたデータを科学者が解析することで環境モニタリングなどを完成させるという枠組みであり,近年欧米などで数多くのプロジェクトが進行している。日本国内では本格的導入が遅れていたが,本事業が日本のシチズンサイエンスの最初の本格的実証例となることを目指している。

人工知能の活用
 シチズンサイエンスの起爆剤としてRE:CONNECT 事業が着目しているのが人工知能である。たとえば,市民ボランティアから提供される画像に含まれる水辺のごみを人工知能で識別することで,手作業では到底不可能なビッグデータの収集が可能になる。2020 年度前期は,ペットボトルなど,水辺で目につき深刻な環境問題として懸念されているプラスチックごみの自動識別を進めてきた。すでに多様なペットボトルの自動識別に成功しており,今後スマートフォンアプリ化するなどの実装を行うことでシチズンサイエンスの実施が可能となる。その広報のため,ウェブサイト「サイエンスリーグ」を立ち上げるなど,市民に対する普及啓発活動を行っている。

年報18号 2020年度フィールド研2020年度の主な取り組み