ポケゼミ報告2010「C.W.ニコルの“アファンの森”に学ぶ」

里山資源保全学分野 柴田 昌三 教授


 少人数セミナー「C.W.ニコル”アファンの森”に学ぶ」は、2010年度も高い競争率から選ばれてきた7名の一回生の登録を得た。しかし、実際には1名の日程調整がつかず、参加した学生の所属学部は、文学部1名、法学部2名、工学部1名、農学部2名(男子3名、女子3名)となった。まず、顔合わせを兼ねて5月17日に説明会を行い、6名が勢揃いした。その後、これも恒例の予習会を7月11日に行った。
 アファンの森訪問は、8月9日~14日に行った。今回の補助は長谷川尚史准教授にお願いした。彼の献身的な補助なしには、このポケゼミは成立しないものであった。また、今回は特別参加で中学生2名も参加した。10日にまず長野県下の森林を見学した。今年は日本海を台風が接近しており、戸隠神社奥社で雨が降り始めてしまった。奥社からいつもの宿であるラボランドくろひめへの道では豪雨となり、濁流が流れ落ちて危険を感じたため、山麓の店で一休みすることとなった。しかし、ここでは地元産の食材に出会うことができ、学生たちはこの味を満喫していた。
 翌11日はアファンの森訪問の初日である。我々を迎えてくださったのはアファンの森財団代表のニコルさん、森を実質的に管理しておられ地元農民でもある松木さん、現地で財団をしっかりとお守りしておられる石井さんの実質上トップスリーのお三方である。いつものようにニコルさんを森の中のベンチで囲んだレクチャーから実習は始まった。学生たちが徐々に心を開き、ニコル・ワールドに引き込まれる様子は、例年のことではあるが、興味深いものであった。翌日は、近づいてくる台風の影響を考え、予定を変更して黒姫高原を訪れた。ここでもニコルさんとの会話を楽しんだが、昼前には雨が降り始めた。午後にはアファンの森を訪問し、松木さんの案内を受けた後、松木小屋でおいしいキュウリをいただきながら、さまざまな示唆に富む会話を楽しんだ。また、夜には、これも恒例となったニコルさんの宿訪問をしていただいた。今年のメニューはシカシチューであった。しかし、学生たちがまだ遠慮気味であったのは、返す返すも残念であった。13日には延期した妙高高原訪問を行った。空模様はまだ十分には回復していなかったが、ミズナラ古木の見学や、水たまりのイモリの観察などをしてから、笹ヶ峰で昼食を楽しんだ。ここでアファンの森財団のご一行とは別れて、同じ妙高山系の東麓にある燕温泉で露天風呂を楽しんでから、宿に戻った。翌日は無事に京都に戻ることができたことは幸いである。
 今回も、学生たちはニコルさんからさまざまな薫陶を受けたようである。そのことは帰洛後に集めたアンケートからも知ることができる。今回は、いつも通っている食堂での食事で、食中毒的な症状を示す学生が現れたり、悪天候に予定が左右されたり、と反省すべき点がいくつかあった。これらは今後のポケゼミの実施に反映していきたいと考えている。また、アファンの森にもついにナラ枯れが到達したことが判明した。豊かなアファンの森にもこのような影が忍び寄っていることも知ることができたポケゼミであった。
 なお、ポケゼミ終了後の9月27日には、同窓生が主催するバーベキューパーティが上賀茂試験地で開催された。アファンの森から強い印象を持って帰ってきた1回生と、懐かしい思い出をたくさん持っている2回生以上の学年の交流は心温まるものであり、ニコルさんの思想をしっかりと受け継いでいる学生達の会話は日本の将来を楽しみにさせるものであった。ここで同窓生たちのメーリングリストの立ち上げが提案され、その後、やりとりが活発に行われている。