ポケゼミ報告2010「日本海に遊ぶ~日本海学入門」

沿岸資源管理学分野 上野 正博 助教 助教


 昨年度,手伝ってくれた院生たちに「一回生なんだから,もう少し優しくしてあげないと来年からは誰も来ませんよ」と叱られた言葉通り,今年度は履修登録者がわずかに6名.しかも,内二人は授業連絡メールにも梨の礫で,結局4名での開講となった.
 ところが,わずか4名の受講者なのだから,なるべく出席可能な日に京都での授業をと日程調整をしたことが徒になり,開講日がなかなか決められられない.おまけに,例年に比してやたらと飛び入り調査が多くて京都に行けない日が多く,結局,舞鶴での集中講義と実習で一気に済ませることになった.
 2月21日に西舞鶴駅に着いた学生たち3名(病欠1名)を拾って,さっそく市内の魚屋を巡る.普段,せいぜいスーパーに並ぶパック詰めの魚しか見たことがない学生たちにとって,市場から仕入れたトロ箱もそのまま並ぶ魚屋の店先は新鮮な驚きに満ちていたようだ.実は水産の勉強で魚屋巡りは基本のキ.店先に並ぶ魚介類の生態やら水産物流通の問題やらを講義しながら,ついでに夜の宴会用も仕入れる.
 午後は日本海の形成から始めて,環境・生物・日本人の暮らしと4時間ぶっ続けで授業.ついで,舞鶴水産実験所の花板をつとめる院生の指導で調理実習.朝仕入れた魚介類を使って魚介類の捌き方,料理法を学ぶ.そして院生達も交えての大宴会.自ら拵えて味わうこともまた,水産の勉強の基本である.
 翌日は,実験所の緑洋丸に乗船し,由良川河口沖から若狭湾沖までの海洋観測と桁網による生物採集を体験した.今年は人数が少ないこともあり,酔って吐きながらも最後まで全員が作業の分担をこなす.さすがに,これで終わりと沖で告げると全員が船室のベッドに直行したが,仕事をするのが船酔いを克服する最良の道ってことを身をもって体験できたようだ.
 最終日は,まず西舞鶴の魚市場を見学.運悪く底曳き網の休漁日だったため,定置網主体の漁獲物しか上がっていなかったが,京都府内各地から運び込まれるいろんな魚介類について生態や漁法,暮らしとの関わりなどを説明した.学生たちは初めて見るセリの光景にかなり驚いた様子.続いて,栽培漁業の実態を見せるために宮津栽培漁業センターへ.作り育てる漁業と日本が世界をリードする栽培漁業の現場が,数十万を超える稚魚を数人の研究員で維持管理して育てる過酷な労働で支えられていることに,学生たちはまたびっくり.
 最後は一メートルを超える雪に埋もれた成相山に上り,眼下に天橋立を眺めながら海岸地形のでき方について講義して,2泊3日の強行軍ポケゼミは無事終了した.