実習報告2010「暖地性積雪地域における冬の自然環境」

森林環境情報学分野 中島 皇 講師


 今年度の実習(全学共通科目の後期集中講義)は2011年2月10日~13日に3泊4日で行われた。テーマは「暖地性の積雪(山間)地域における冬の自然環境を体感する。雪氷調査法(入門)を習得し、水が態を変えた雪や氷について理解を深めその影響を考究する。特に人間をはじめとする生物への影響をフィールドで実感する。(シラバス)」である。
 今年度は雪の心配はなかった。逆に、1月から雪害が出るほどの雪があり、林道でスノーモービルの活用が難しくなる可能性があった。参加申込みは定員の15名を越えキャンセル待ちが出が、キャンセルが出たり、前日に病気などの理由で不参加になった者もいて、最終参加者は12名(男7,女5)(学部:文1,工2,農7,総人2)であった。実習は1月後半の説明会から始まる。メンバー15人が顔を合わせ、班毎に夜・朝・昼の食事メニューを食材の量も含めて考える。大学院生のTAとやり取りをして、出発前日或いは前々日に買い出しに行く。現地では自分たちで調理と後片付けまでこなす必要がある。準備する食料の多さに面食らっているがどうにか準備が出来た。
 JRバス周山駅11:00集合で実習は始まった。例年なら芦生のマイクロバスが迎えに来てくれるのであるが、芦生までの道にも雪が多いそうで数台の乗用車に分乗することになった。途中の説明は無線を通して車内に流れるような方式を技術職員の方で考えてくれた。途中の自然環境や人間の暮らしを確認しながら、降る雪に迎えられて芦生に到着した。昼食後、カンジキによる歩行訓練、宿舎周辺の積雪状況を通しての自然観察、雪の造形を写真に撮ってくるプログラムがスタートした。夕食後のセミナーで芦生研究林の概要説明と各自が撮ってきた写真の発表会でにぎやかであった。
 翌朝は握り飯を作って内杉谷林道の自然観察に出発した。つららや霜柱、雪害のため真っ二つ裂かれたスギの木、カーブミラーを足元に見ながら進む。曇り空ながら視界は良好で、お昼は幽仙橋の土場でスープを作った。流量観測の水位計は完全に雪に埋もれてしまっており、これを掘り出すのに時間がかかった。どうにか明日のデッサン用の葉や虫が入っている流出物ネットを回収することが出来た。夜のセミナーはTAの研究紹介である。
 3日目はまぶしい太陽が出る天気。積雪に層があり、質に変化があることを調べる積雪調査と雪の中での便利な移動手段であるスノーモービルの試乗に挑戦した。昼食は食堂でとって、午前と午後で班毎に交替した。午後は太陽が顔を出してまぶしく暑いくらいだった。昨日幽仙谷でやっと回収してきた流出物の中にいる水生昆虫について、調査隊の境優さん(地球環境学舎D3)が説明をしてくれた。皆、動物には興味津々。虫と葉のデッサンを熱心に描いていた。夕食はカレー。夜のセミナーは別に来ていた理学部の中川光さん(動物学研究室D3)が芦生の川の中の生物を紹介してくれた。これもまた印象的だったようである。
 最終日は班毎にレポート作成と各自の感想文、そして宿舎の片付けと掃除で昼食後、芦生研究林の車ででJR山陰線の園部駅まで送ってもらって解散になった。帰りの雪景色は名残惜しいものであっただろうか。