瀬戸臨海実験所、舞鶴水産実験所が文部科学省共同利用拠点に認定

里海生態保全学分野 山下 洋


 文部科学省は平成22年度より教育関係共同利用拠点制度を発足させ、平成23年度より当センターの瀬戸臨海実験所と舞鶴水産実験所が共同利用拠点として認定されました。本制度の目的は、各大学が自らの強みを持つ分野へ取組を集中・強化するとともに、他大学との連携を進めることによって、より多様で高度な教育を展開し、大学教育の充実に資することです。採択された拠点としての課題は、瀬戸臨海実験所「黒潮海域における海洋生物の自然史科学に関するフィールド教育共同利用拠点」、舞鶴水産実験所「日本海における水産学・水圏環境学フィールド教育拠点」であり、拠点認定期間は平成27年度までの5年間です。

 瀬戸臨海実験所では、毎年10件を越える他大学の臨海実習を長年受け入れており、また、全国大学公開臨海実習を年に2回開催するなど、これまで共同利用実績を着実に積み上げてきました。平成24年度より全国の大学生が受講する公開臨海実習科目として、「基礎海洋生物学」、「海産無脊椎動物の系統と進化」、「藻類の系統と進化」、「発展海洋生物学」、「自由課題研究」の計5科目(講義名はいずれも仮題)を開講する予定です。これらの実習では、白浜の恵まれたフィールドを舞台に、平成21年に建造した最新鋭の教育研究船ヤンチナ(定員26名)や、透過型及び走査型電子顕微鏡、DNAシークエンサーなどの最先端の機器を活用した系統分類学、発生進化学、生態学など、黒潮海域における海洋生物の自然史科学実習を行います。
 舞鶴水産実験所では、今年度から既存の実習3科目について他大学生を受け入れて公開実習にするとともに、平成24年度から、「若狭湾春期の環境と海洋生物実習」、「若狭湾秋期の環境と海洋生物実習」の二つの全国大学生向け公開実習を新たに開講予定です。教育研究船緑洋丸(定員30名)により、1時間で河川の河口域から丹後海沖合の日本海固有冷水域(水深200m)まで移動することができ、日本海固有の特徴的な環境、生物相、海洋生物生産の仕組みをおもにフィールド調査を通して学びます。また、公開実習である「森里海連環学実習A」は、流路146kmの由良川の環境と生態系、および人による流域利用がそれらに与える影響を、実際に源流(フィールド研芦生研究林)から河口・沿岸域まで1週間かけて現場で調べる実習であり、複合生態系の調査と多様なデータの分析手法を学ぶ、他大学には例のない大変ユニークな科目です。

 共同利用拠点として大学教育の充実を図ることはもちろんですが、このほかにも、両施設は多くの中学生・高校生実習(各5~10数校)や子供・市民を対象とした地域講座を開催しており、京都大学のフィールド施設として、地域の教育研究にもさらに貢献していきたいと考えています。

ニュースレター24号 2011年9月 教育ノート