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教育活動

森里海連環学実習C 「別寒辺牛川流域における森里海連環学実習」

2011年8月27日~9月2日、全学共通科目(1~4回生対象)森里海連環学実習C京大・北大合同実習(夏の北海道実習)を開講しました(日本財団助成実習・京都大学11人、北海道大学8人)。

森林資源管理学分野 吉岡 崇仁 教授

 平成23年度の森里海連環学実習C は、京都大学フィールド科学教育研究センターの北海道研究林標茶区と北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの厚岸臨海実験所を拠点として、8月27日から9月2日の日程で実施した。

【実習日程】
 2011年8月27日 実習生集合、ガイダンス、安全教育、講義、樹木識別実習
 2011年8月28日 天然林毎木調査、土壌調査、講義
 2011年8月29日 パイロットフォレスト視察、牧草地土壌調査、水源域調査、
          講義、水質分析実習
 2011年8月30日 別寒辺牛川の水生生物・水質調査、講義
 2010年8月31日 厚岸湾および厚岸湖の水質・底質・水生生物調査、グループ発表準備
 2010年9月 1日 グループ発表、レポート作成
 2010年9月 2日 レポートとアンケートの作成・提出、解散

【実習生とスタッフ】
 受講した実習生は、京都大学から9名、北海道大学から7名、男子学生10名、女子学生6名の計16名であった(写真1)。受講生4名ずつで「森」「川」「里」「海」の4つの班を構成した。男・女および京大・北大が混成する班になるようにした。教員及びTAは、京都大学からそれぞれ5名と2名、北海道大学から4名と1名である。京都大学フィールド科学教育研究センターの技術職員6名、北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの技術職員2名の協力を仰いだ。

【野外実習の内容】
 標茶研究林での毎木調査では、天然生林の尾根と谷部にそれぞれ2つずつのプロット(20×10m)を設置し、各班が1プロットを担当して、胸高直径5cm以上のすべての木の胸高直径と種類を記録した(写真2)。また、プロット周辺において土壌断面を作成し、森林における土壌の形成過程、火山灰の堆積に関する実習を行った(写真3)。尾根と谷部とで出現する樹木の種類、種数に大きな違いがあるとともに、土壌にも違いが見られたことから、受講生の関心を喚起したようである。また、研究林で実施している人工林での間伐施業地と隣接地において国の事業として取り組まれてきたパイロットフォレストを視察し、林業に関する知見も少なからず得ることができたと思う。
 水質調査では、昨年に続いてデジタル・パックテスト・マルチ(写真4)と携帯型イオンクロマトグラフィーを併用して分析の原理と実際の試料測定を実習した。パックテスト試薬による分析項目は、アンモニア態窒素、硝酸態窒素、化学的酸素要求量(COD)、鉄イオンの4項目である。イオンクロマトグラフィーでは、主要な陰イオンである塩化物イオン、硝酸態窒素、硫酸態イオウ、リン酸態リンなどを定量した。天然生林の多い流域でも硝酸態窒素濃度の高い地点があるなど水質形成メカニズムが複雑であることを実感していた。
 水生生物実習では、特別採捕の許可を得て、標茶研究林内の水源域と別寒辺牛川−厚岸湖・厚岸湾流域で実施した。研究林内の水源域での調査(写真5)では、サクラマスの遡上を観察し、その美しい姿に学生スタッフともにしばし見とれていた。別寒辺牛川の上流域では大型のアメマスが見つかった。これは、海に降って成長した後、産卵のため川を遡上してきた個体である(写真6)。サクラマスなどとは異なり、産卵後降海し、翌年以降再び産卵のため遡上するという生活史を持っている。近年、別寒辺牛川流域では、特定外来生物に指定されているウチダザリガニが多く見つかっている(写真7)。日本固有のニホンザリガニを駆逐していることについて、野外で学ぶことができた。なお、捕獲したウチダザリガニはすべて殺処分した。本流の上流(写真8)及び中流域の支流において、電気ショッカーを用いた捕獲を行った(写真9)。電気ショッカーは、特別採捕の申請時に願い出て、使用が許可されたものである。水量が多かったせいか、大型の魚は捕獲できなかったが、電気ショックに驚いて飛び跳ねるエビの姿をみて驚きの声を上げる実習生が多かった。森林内と牧草地内を流れる川の調査地点間での水生生物の種多様性や魚類の食性(消化管内容物)の比較を行った。森林内を流れる河川で捕獲したアメマスの消化管からは、多数の陸生昆虫が見つかり(写真10)、森と川のつながりを観察することができた。
 厚岸湾では、昨年は大黒島でアザラシを観察できたが、今年は台風の波浪のため外海に行くことができなかった。そこで、アイニンカップ岬(写真11)の沿岸で調査することにした。北大厚岸臨海実験所の調査船「エトピリカ」(写真12)を使用して、沿岸の水生生物を採取するとともに、浅いところでは実習生自らが採集した(写真13)。この沿岸域には、オオアマモ、アマモ、スガモの三種類の海草が生育していた(写真14)。一方、厚岸湖の沿岸(チカラコタン)でも同様の調査を行った(写真15)。実験所では、別寒辺牛川流域および厚岸湖、厚岸湾で採集された魚類や無脊椎動物の同定と消化管内容物の観察を行った。動物相が、海、湖、河川でどのように異なり、また、動物の餌資源が、海、湖、川起源から陸起源に移り変わる様子を消化管内容物の調査から把握した。

【実習のまとめ】
 「森」「川」「里」「海」の各班それぞれに異なる場の視点から各自が実習で得たデータを解析し、森里海の連環について考察しグループ発表を行った(写真16 & 17)。連日夜遅くまでデータのとりまとめやレポートの作成を熱心に続けていた。発表でも、各班独自の観点から森・川・里・海の連環を説明しようと努力していることがよく分かる内容であった。
 別寒辺牛湿原の水鳥観察館見学やパイロットフォレストのビデオ鑑賞・見学、標茶研究林の人工林間伐区を見学することによって、自然と人間のかかわりの一端に触れることができたものと思う。

 本実習は、森里海連環学に多大の理解と期待をお寄せいただいている日本財団からの助成を受けて実施されたものである。ここに記して感謝の意を表する。