「横浪林海実験所・横浪林海研究交流センター」の開所式 

フィールド科学教育研究センター 副センター長 竹内 典之


 京都大学フィールド科学教育研究センターが高知県の仁淀川流域を中心に「森里海連環学」の教育研究を展開するための教育研究拠点「横浪林海実験所・横浪林海研究交流センター」(以後、横浪林海実験所という。)が、平成18年4月27日(木)に高知県須崎市浦ノ内で開所した。「横浪林海実験所」は、京都大学フィールド科学教育研究センターと高知大学大学院黒潮圏海洋科学研究科及び高知県産業技術委員会が高知県における「森里海連環学」の推進と、“海の森”である藻場の育成・保全とそこを生息場とするイセエビ等の重要水産資源の持続的有効利用を展望した“池ノ浦・里海構想”の実現を目的として開設されたものである。本施設は、財政難から平成16年8月末に閉園し取り壊しが決定していた旧高知県立「横浪こどもの森」の施設活用を、アウトドアライターの天野礼子氏が高知県に提案し、同氏の尽力で高知県が施設を京都大学と高知大学に開放して共同研究・研究交流の拠点として利用することとなり、平成18年2月23日(木)に協定を結んでいた。

 この日は、改修の完了した施設において、開所を記念して、解剖学者でベストセラー「バカの壁」などでもよく知られる養老孟司氏とチョウの研究家としても知られる電子部品メーカー「村田製作所」社長・村田泰隆氏による記念対談があり、関係者ら約40人が耳を傾けた。養老氏は「ゴミ掃除は、見た目がきれいになるだけで世界の秩序が増すわけでなく、実際はゴミが移動するだけ」と独特の語り口で「世界の秩序」を説明した。また、村田氏は「自然は、チョウやトンボは好きだが、カやハチは嫌いといった、人間の好みなどによって勝手に選択できるものではなく、全体を保全することが重要」と語った。この対談の記録は、平成17年12月18日(日)に京都大学フィールド科学教育研究センターが主催した第2回時計台対話集会「森と川と海の対話-安心・安全な社会を求めて」の報告集の巻頭を飾るものである。

 対談後、京都大学フィールド科学教育研究センター・高知大学大学院黒潮圏海洋科学研究科・高知県産業技術委員会・高知県水産試験場・池ノ浦漁業協同組合の関係者に養老氏と村田氏も加わって看板の除幕を行った。すでに、施設の前に展開する海では、高知大学大学院黒潮圏海洋科学研究科や高知県水産試験場の研究メンバーに京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所の研究メンバーも参加して基礎調査が推進されている。また、京都大学フィールド科学教育研究センターでは、9月23日から29日の1週間に少人数セミナー「高地・仁淀川流域の自然」を「横浪林海実験所」を拠点に、高知県水産試験場・池ノ浦漁業協同組合・仁淀川漁業協同組合や仁淀川流域の人々の応援を得て開講する予定である。

 「横浪林海実験所」は、面前に土佐の海が広がり、背後に照葉樹の魚付き林が展開するすばらしい環境に恵まれた施設で、今後、活発な教育研究利用や地域住民との連携が期待される。

ニュースレター8号 2006年8月 ニュース

(参考)
協定書(PDFファイル)