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教育活動

ポケゼミ報告2012「京をめぐる森と人のくらし」

森林生態保全学分野 嵜元 道徳 助教
森林資源管理学分野 坂野上 なお 助教

 少人数セミナー「京をめぐる森と人のくらし」は、8名(文学部1名、法学部1名、経済学部2名、医学部1名、工学部1名、農学部2名)の受講者とともに、京都市周辺に広がる二次的な森林植生と人の関わりとの理解を目的として、初回と最終回の室内講義と、京都市周辺の古社寺とその所有林など5ヶ所を訪れてのフィールドワークを実施した。

 フィールドワーク第一回目の大文字山コースでは、先ず、銀閣寺を多くの観光客に紛れて拝観した。その後、強い日差しを受ける中、五山の送り火で有名な「大文字」まで登り京都市街地の大パノラマ風景を望みながら暫し休憩を挟んだ後、さらに大文字山山頂までを往復し、アカマツと落葉広葉樹から成る大文字山の森と歴史について学んだ。第二回目の東山コースでは、それぞれの社寺(清水寺など)の歴史、森の管理の歴史、古建築の材種について、さらには現在見られる森と主要構成種の生態特性などについて学んだ。第三回目の比叡山コースでは、延暦寺の根本中堂と文殊楼の古建築、境内林を構成する杉の巨木を見学した後、最澄が辿ったとされる本坂を途中まで下りモミ林と分布下限域に在るブナの巨木、円仁廟、そして延暦寺所有の広大な人工林を見学しながら、比叡山の森と人の関わりについて学んだ。第四回目の上賀茂コースでは、賀茂別雷神社とその周辺の森を見学し、ヒノキを中心とした上賀茂の森と人の歴史的な関わりについて学んだ。そして、フィールドワーク最後となった第五回目の京北・山国コースでは、平安時代以降、禁裏御料地とされていた山国地域を訪れ、往時の森の姿がうかがえる片波川源流域自然環境保全域で台杉の巨木群を主とした森、光厳法皇の生涯を伝えているかのように山間にひっそりと佇んでいる常照皇寺とその所有林、そして山国神社を見学し、京北・山国の森、人の利用、そして流通などについて学んだ。また、帰りには、中世に始まったともされる北山林業地での台杉仕立てによる垂木生産地も見学した。
 五回のフィールドワーク全てが天候に恵まれ、爽やかな新緑が薫る中、予定通りに楽しく実施できた。そのお陰なのか、本ポケゼミは学生諸君にかなり好評であったことがアンケートからうかがえた。一方、学生諸君に課したレポートでは、普段、街中から何気なく眺めているだけでは分からない森の中の様子、木々の生活などを間近にすることによって森への意識や認識に変化があったこと、また街周辺の森(二次林)が人々のくらし・利用などによる関わりとの中で長年かけて形成されてきたことを改めて認識したことなどが書かれており、森の中で見て、感じて、深く考えていたことがうかがえた。さらに、京都市周辺の森林景観については、自然植生の推移のままに任せる、社寺と森のバランスがとれた状態を維持する、森と人工物が一体性をもつような調和を図った都市をつくるなど、自らの考えをしっかりと書いている学生諸君が多く、感心させられた。