吉岡 崇仁

参考情報(2024-03-31 までの情報です)

yoshioka_takahito
フィールド科学教育研究センター森林生態系部門
森林情報学分野 特任教授
E-mail:yoshioka.takahito.6r*kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)
業績など(教育研究活動DB)

(2016-04-19 最終更新)

1. 研究分野
 私の専門分野は、生物地球化学です。主な研究内容は以下の通りです。

(1)集水域における物質循環
 森−川−海からなる森林集水域環境における、炭素と窒素を中心とした物質の循環を研究しています。琵琶湖集水域での調査から、渓流水中の溶存有機物(DOM)と硝酸塩(NO3)の間に非線形の負相関を見出して以来、この関係を成立させている生物地球化学過程や、それぞれの濃度変動が集水域環境について何を物語るのかなどに興味を持って研究を続けてきました。渓流に存在するDOMの多くは、腐植物質と呼ばれる色(黄色〜褐色)のついた有機物で構成されると考えられています。この腐植物質は独特の光学特性を持っていて、三次元蛍光測定装置によって蛍光特性を測定することで定量、定性分析ができます。また、炭素安定同位体の存在比(δ13C値)によって陸上植物起源か植物プランクトンや付着藻類起源かを区別することなどができます。これらの生物地球化学的手法によって、森林集水域や河川流域におけるDOMの起源や変質を調査してきました。現在も蛍光特性を主な手法として、京都大学フィールド科学教育研究センターの芦生研究林などで森林小集水域におけるDOM、NO3の流出プロセスを研究しています。
 森里海連環学に関する研究では、2009年から2013年の5年間、「森里海連環学による地域循環木文化社会創出事業(略称:木文化プロジェクト)」を由良川流域において実施しました。海の植物プランクトンの生育に必要な溶存鉄の供給源について、上流に分布する森林よりむしろ中下流域に広がる農耕地や湿地が重要であることが示唆されました。このプロジェクトに関しては、下記のウェブページをご覧下さい。
 木文化プロジェクトウェブページ

(2)環境の質と環境意識の関係に関する研究
 2001年に設立された文部科学省総合地球環境学研究所(現在、大学共同利用機関法人人間文化研究機構所属)に所属したときには、人びとの環境に対する意識を取り上げて研究プロジェクト(環境意識プロジェクト)を実施しました。環境意識は、主にアンケート調査によって解析しましたが、人々の森林や農地、川・湖といった環境に対する関心の強さが、これらの直接利用価値や間接利用価値、生態系機能といった範疇で仕分けできることが分かりました。また、自然科学的手法である物質循環のシミュレーションモデルを使って、森林集水域の環境変化を予測した上で、その変化に対する人々の意識の変化を測定することによって、環境意識に影響をおよぼす環境の質を特定しようと試みました。森林伐採をしたときの環境変化として、人びとが一番気にするものは、水系の富栄養化であるという意外な結果が得られました。人びとが森から川や湖、海が環境として一つにつながっていると認識しているためだと考えられます。将来の地球環境が懸念されている今、環境の研究には、自然科学分野だけではなく、人文・社会学分野の研究も組み入れてゆかねばならないと思います。総合地球環境学研究所から京都大学フィールド科学教育研究センターに異動してからは、「森里海連環学」の枠組みのなかで、「里」に生きる人びとの環境意識に関するテーマを考え続けています。

 ここでご紹介した研究の内容について、執筆あるいは編集を担当した書籍等を以下にご紹介します。参考にしていただければ幸いです。

○安定同位体比による生態学研究
 吉岡崇仁、1994、生態物質循環系における安定同位体の分布、『微生物の生態 19巻』、学会出版センター、p.139-160.
 吉岡崇仁、2000、安定同位体生態学、「水と生命の生態学」ブルーバックスB1308、日高敏隆編、講談社、p.176-187.
 南川雅男・吉岡崇仁編著、2006、『生物地球化学』、日本地球化学会監修、培風館、東京、pp.213.

○集水域の生物地球化学
 武田博清・占部城太郎編著、2006、『地球環境と生態系−陸域生態系の科学』、共立出版、pp.282.
 J. G. Canadell, D. E. Pataki and L. F. Pitelka (eds.), 2007, “Terrestrial Ecosystems in a Changing World”, Springer-Verlag, Berlin Heidelberg, pp.336.
 日本陸水学会編、2011、『川と湖を見る・知る・探る 陸水学入門』、村上哲生・花里孝幸・吉岡崇仁・森和紀・小倉紀雄監修、地人書館、pp.193.
 Mostofa, K. M. G.; Liu, C.-Q.; Zhai, W.-D.; Minella, M.; Vione, D.; Gao, K.; Minakata, D.; Arakaki, T.; Yoshioka, T.; Hayakawa, K.; Konohira, E.; Tanoue, E.; Akhand, A.; Chanda, A.; Wang, B.; Sakugawa, H. Reviews and Syntheses: Ocean acidification and its potential impacts on marine ecosystems. Biogeosciences, 2016, 13, 1767–1786.

○溶存有機物
 F. Wu and B. Xing eds., 2009, “Natural Organic Matter and Its Significance in the Environment”, Science Press, Beijing, P. R. China, pp.325.
 K. M. G. Mostofa, T. Yoshioka, M. A. Mottaleb and D. Vione eds., 2013, “Photobiogeochemistry of Organic Matter: Principles and practices in water environments”, Springer-Verlag, Berlin Heidelberg, pp. 917.

○環境意識、森里海連環学研究
 吉岡崇仁編、2009、『環境意識調査法 −環境シナリオと人々の選好−』、総合地球環境学研究所環境意識プロジェクト監修、勁草書房、東京、pp.196.
 京都大学フィールド科学教育研究センター編、2011、改訂増補版『森里海連環学』、山下洋監修、京都大学学術出版会、pp.370.
 京都大学フィールド科学教育研究センター編、2012、『森と海をむすぶ川』、向井宏監修、京都大学学術出版会、pp.335.
 N. Shimizu, R. Tateno, A. Kasai, H. Mukai, Y. Yamashita eds., 2014, “Connectivity of Hills, Humans and Oceans: Challenge to Improvement of Watershed and Coastal Environments”, Kyoto University Press, Kyoto, pp.283.
 吉岡崇仁、2015、『人と自然のつながり:森里海の連環』、第62回京都大学附置研究所・センター品川セミナー、2015年7月3日.(講演映像 京都大学オープンコースウェア
 松山 周平・福島 慶太郎・白澤 紘明・向 昌宏・平井 岳志・境 慎二朗・石原 正恵・岩井 有加・八木 弥生・谷 鑫・立岩 沙知子・長谷川 尚史・吉岡 崇仁,間伐とシカ排除柵設置がスギの幹成長に及ぼす直接的・間接的影響 -芦生の未間伐スギ人工林における事例. 森林研究, 2016, 79, 1-9.
 松山 周平・谷 鑫・立岩 沙知子・白澤 紘明・吉岡 崇仁,長治谷草地のシカ排除柵内外の植生変遷と柵の開放試験, 森林研究, 2016, 79, 11-20.

2. 好きなもの、趣味
 以前は週に1回はバドミントンをしていましたが、このところ全然運動していません。身体を動かすことといったら、歩くことぐらいです。学内の会議があると普段の2倍になるといった程度ですから、足らないでしょうね。アカンと思います。お酒は依然として好きですが、週に1回程度です。お漬け物と湯豆腐が好きなことは変わっていません。趣味にかける時間が今のところないのですが、そろそろ老後を考えねばならなくなってきました。定年後に、と思ってペーパークラフトの素材を集めています。市販のスバル360や戦艦大和はもう買ってあります。無料のものがネットにはたくさんあるので、ダウンロードしました。プリントアウトして、切って貼って、の準備もしてあります。万端そろっています。試しにいくつか作ってみました。時間があれば、楽しみながら作ることができて、作品を眺めながらお酒でも・・・と考えていましたが、作業する手元が見えません。見える位置だと手が届かん。拡大鏡も買おうと思います。照明つきのゴーグルタイプかな。

3. その他
 湖から集水域へ、そして森里海連環へと研究対象が拡がってきました。手法も微生物生態学、安定同位体生態学、有機地球化学、森里海連環学と様々なものを試してきました。広く浅くにしかできていませんが、楽しくやってくることができました。学生さんにそのことが伝わっていればいいのですけどね。楽しいのが一番ということが。


(フィールド研における経歴とページ履歴)
2007-05-01/2013-07-31 森林生物圏部門 森林資源管理学分野 教授 着任
2007年度 http://fserc.kais.kyoto-u.ac.jp/main/main/staff/yoshioka.htm でページ公開
2010-04-01/2011-09-30北海道研究林長
2011-04-01 http://fserc.kyoto-u.ac.jp/wp/staff/yoshioka にページ移設・内容更新
2012-04-01/2014-03-31 北白川試験地長
2013-04-01/2017-03-31 センター長・管理技術部長・企画情報室長
2013-08-01/2021-03-31 森林生態系部門 森林情報学分野 教授 (部門分野名変更) ・(写真を追加)
2013-08-21 ページにメールアドレスの追加
2014-04-01/2015-03-31 上賀茂試験地長
2014-10-09 ページに教育研究活動DBへのリンクを追加
2009-05-01/2015-03-31 森里海連環学プロジェクト支援室長
2015-04-01 徳山試験地担当
2015-11-16 研究紹介等を更新
2016-04-07/2021-03-31 徳山試験地長・北白川試験地長
2016-04-19 研究紹介等を更新
2019-04-01/2021-03-31 上賀茂試験地長
2021-04-01/2024-03-31 京都大学名誉教授、森林生態系部門 森林情報学分野 特任教授・研究員
2024-03-05 教育研究活動DBへのリンクを修正