上賀茂試験地における種子交換業務について

上賀茂試験地における種子交換業務について

上賀茂試験地 岡部 芳彦

 上賀茂試験地では1926年の設立当初より樹木見本園を充実させるため、海外の植物園や大学の施設と樹木種子の交換を行い様々な樹種を導入しています。提供する交換用の種子は、フィールド科学教育研究センターの研究林・試験地や京都周辺の山などで採取します。採取方法は、高枝切りばさみや剪定ばさみを使用するか、手で摘み取る、木を揺らして落ちたものや落ちているものを拾うなど様々です。採取した種子は、種類ごとに分別して1年から数年間保存するのですが、そのためには種類によって異なる作業が必要となります。天日干しや陰干しの後で種子以外の部分を取り除いたり、果肉があるものは水で洗うなどして取り除きます。ドングリやトチノキ・クルミ類など大型の種子の場合は、水でよく洗った後、湿らせた水苔と一緒に袋に入れて保湿したりします。これらの過程でシイナ(粃:種子が実っていないもの)や虫食いなど不良種子があれば取り除き、冷蔵保存します。そして、採取地、採取年月日を記載した種子のリストを作成します。ホオノキなど休眠性のある種は、在庫があれば数年間続けてリストに掲載しています。
 現在、上賀茂試験地で交換用種子のリストには80~130種を掲載しており、毎年1~3月頃に約150の国外の施設にリストを送付しています。5月頃まで注文を受けつけ、希望する施設に種子を発送しています。受注数は、年間40~60機関から延べ300~800種類程度です。一方、海外の約50機関から種子リストが送られてきます。上賀茂試験地からの種子注文は、延べ200種類を超えた年もありました。播種・育苗の作業量が膨らむため、ここ数年はマツ属を中心に延べ30~50種程にして苗の整理を行っています。樹木見本園を充実させるためには、種子の注文・播種から植栽まで計画的に行い、導入個体のプロフィールを分かり易く記録することが重要だと考えています。

ニュースレター49号 2019年10月

 技術ノート