木文化プロジェクト平成21年度より本格的に始動!

里山資源保全学分野 柴田昌三

 フィールド科学教育研究センターでは、森里海連環学を実践する場として、京都府由良川、高知県仁淀川、和歌山県古座川などの流域を対象にして、調査研究を行ってきました。特に、由良川と仁淀川に関しては、最も重要な流域として捉え、この二流域を対象とした調査研究を、京都大学の概算要求(連携融合事業)プロジェクトとして認めてもらうために申請を続けてきました。その結果、二年越しの努力を経て、平成21年度から五年間にわたって予算が付くことが決定されました。本プロジェクトの正式な名称は「森里海連環学による地域循環木文化社会創出事業」といいます。昨年12月に開催されたキックオフミーティングで、この事業の略称は「木文化プロジェクト」とすることにしました。
 本プロジェクトは、日本の生態系の荒廃の根本的な原因の一つが森林の管理不足に起因すると考え、大規模な森林管理を行うことによって、周辺の森林生態系や河川生態系にどのような影響を及ぼすのか、あるいはその影響は中流域から河口、沿岸域に至る下流に向かってどの程度及ぼされるものなのか、また、どのようにこれらの生態系は改善されるのか、を知ろうとするものです。また同時に、管理によって産み出される木質資源の利用過程を追跡し、その結果に基づいて、より効率的な資源利用を検討するほか、そのような活動が流域に住む方々の意識にどのような影響を与えるのか、といった人文社会学的な解析も行うことによって、自然科学、人文社会科学の両面から新たな「木文化社会」の創出を提案しよう、というものです。このような壮大なプロジェクトですので、もちろん、予算がつく五年間ですべてが解明できるものではありませんが、そのための礎を最初の五年間で築きたいと考えています。
 皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

ニュースレター16号 2009年3月 ニュース