京都大学名誉教授・第5代センター長 山下 洋
私は2002年まで、畠山さんの水山養殖場(気仙沼市)から80kmほど南の塩竈市にある東北区水産研究所に勤務していました。その頃、海藻生産に対するフルボ酸鉄の効果に関する学会での激論について耳にしていましたが、魚類の資源生態学を研究していた私には遠い世界の話でした。
ところが思いがけず京都大学に異動となり、2003年に発足したフィールド研において、森里海連環学という未知の分野に足を踏み入れることとなりました。そこで最初に手に取ったのが畠山さんの一連の本であり、私にとって森里海連環学の道しるべとなりました。また、講義などで京大にお出でくださった機会には、個人的にも様々なお話を伺い、その中で、個別の問題を解決しようとする場合でも全体最適化の発想が基本であることを学びました。畠山さんの「森は海の恋人」の思想とそれを実践する行動力は、世の中のあり様を考え直すうえで、社会に対して極めて重要な影響を与えたと思います。私自身も、畠山さんの「森は海の恋人」を科学的に問うことが研究目標となりました。残念ながら、森が河口域生態系の保全に貢献することを示す科学的証拠を見つけたところで定年となりましたが、近い将来、畠山さんが最も気にしておられた“森と海をつなぐメカニズム”を、次世代の研究者がきっと解明してくれるものと期待しています。
畠山さんとの森里海対談:森里海連環学教育研究ユニット年報『森里海』1号から[巻頭記事]を抜粋
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