NaGISAプロジェクト

海洋生物多様性保全学分野 白山 義久


 NaGISA(Natural Geography In Shore Area)プロジェクトは,世界の海洋に生息する海洋生物の多様性,分布,個体数を評価し解明するために企画された科学研究プログラムである海洋生物のセンサス(Census of Marine Life, CoML, http://www.coml.org/)プロジェクトの中のひとつのフィールドプロジェクトである。白山がPIを務め,瀬戸臨海実験所をHQとして北米・南米・東南アジアなどを中心に,すでに20カ国以上が参加している国際プロジェクトでもある。さらにインド洋沿岸各国も参加に強い関心を寄せており,2004年にはこれらの国々の参加を検討するワークショップを開催することを検討している。
 このフィールドプロジェクトは,沿岸生物の多様性の地理的パターンを地球規模で明らかすることを目指しており,すべての参加者が統一された方法で海洋生物を採集・分析し,そのデータを持ち寄って地域間比較をする。できるだけ多くの人が参加できるように,その方法は専門家以外でも実施が可能な平易なものになっており,我が国では,SCUBAダイバーのNGOが,またアメリカのアラスカ州では多くの一般市民がサンプリングに参加している(図1)。また2004年にはフロリダ州の高校が夏期野外教育プログラムに取り入れることが内定している。
 NaGISAでは採集したサンプルの研究を支援するため,タイのプーケット海洋生物学センターにソーティングセンターを設立し,訓練した現地の若手研究者を雇用して,生物の分別と標本の作成作業を行っている。さらに各国に,自力で分類同定を行うことができる,いわゆるパラタクソノミストを養成することをめざして,分類学の教育コースを開設しており,第1回の訓練コースを,タイのプーケットで2003年9月に開講した(図2)。この事業では,またプロの分類学者の協力を得るために,若手分類学者を各国の採集サイトに派遣する,分類学者キャラバンを組織することも予定している。
 各国で参加者が出したデータは,NaGISAのポータルサイトに納められ,参加者は自由にデータにアクセスして,ポータルに実装されたGISなどの支援プログラムを利用して,結果の解析をすることができるようになる。このポータルサイトは現在構築中で,2004年中には完成する予定である。
 現在このプロジェクトは,CoML計画全体をサポートするスローン財団からの奨学寄付金を中心として,JSPSや環境省の地球推進費などからも,部分的な資金支援を受けている。なおこの計画に関する情報は,http://www.nagisa.coml.org/から,得ることができる。

ニュースレター1号 2004年 2月 研究ノート