北海道研究林における他大学利用

北海道研究林長/森林情報学分野 准教授 舘野隆之輔


 フィールド研では,舞鶴水産実験所と瀬戸臨海実験所が教育関係共同利用拠点(以下,拠点)として活動してきたが,森林系施設でも,拠点への認定に向けて他大学教育利用の推進に努めてきた。拠点は単一の施設が認定されるのが一般的であったため,当初は芦生研究林と上賀茂試験地のそれぞれで申請を進めてきたが,北海道大学の複数施設の森林系施設で構成されるネットワーク型の拠点が認定されたのを機に,フィールド研でも複数施設での拠点申請の検討を開始した。芦生研究林・上賀茂試験地に加えて,他大学実習や他大学生の研究利用が近年増加していた北海道研究林を含む3施設での申請を行ったところ,2015年7月に「人と自然のつながりを学ぶ森林フィールド教育共同利用拠点」として認定された。北海道研究林を加えることで,地理的にも本州から北海道をカバーすることができるようになり,ネットワーク型の拠点としても充実したものとなった。フィールド研教員を中心に開講している森里海連環学実習には,芦生研究林と舞鶴水産実験所の合同で行ってきた森里海連環学実習Iと北海道研究林と北海道大学厚岸臨海実験所で行ってきた森里海連環学実習IIがあるが,今回,3施設が拠点認定されたことで,京大・北大ともに連環学実習を担当する施設のすべてが拠点施設となり,今後は,分野間や大学間を超えた複数の拠点同士の連携を一層推進していく予定である。
 拠点活動に関連して,北海道研究林では森里海連環学実習IIに加えて,2016年度からは新たに公開森林実習IIを開講し,全国の大学生を対象にした実習を行っており,協定関係にある国公立大学の学生に関しては,特別聴講制度による単位互換も行っている。また拠点として本学で開講する科目以外にも,他大学実習の誘致も積極的に進めており,2012年までは北大との合同の森里海連環学実習IIのみの1件であったが,2013年は2件,2014,2015年は3件,2016年は7件と増加傾向にある。現在は,酪農学園大学,東京農大網走校,北海道教育大釧路校などの北海道内の大学の受入れのみであるが,今後は全国の大学からの受入れを推進できればと考えている。
 現在受入れている実習は,従来学内で行ってきた樹木識別や毎木調査,土壌調査など森林科学に関連する実習内容が多いが,これまで北海道研究林では行っていなかった地域教育に関する実習も受入れるようになっており,今後は実習メニューを拡張し,多様な専門分野の学生の受入れを目指したいと考えている。また卒業論文,修士論文などの教育研究利用については,道内に限らず増加傾向にあるため,利用者が研究しやすいように施設や森林フィールドの整備,資料整理などもさらに進めていきたい。

年報14号