ILASセミナー報告2020「瀬戸内に見る森里海連環」

ILASセミナー報告2020「瀬戸内に見る森里海連環」

森林情報学分野 中島 皇 講師

 新型コロナ禍によって大きな変更及び対応を求められるILASセミナーとなった。顔合わせ,心構え(森里海連環学や瀬戸内の予備知識,JR 徳山駅までのアクセス方法や課題(試験地で発表する瀬戸内地域に関するレポート)のヒントなど)のセミナーを6月,7月に1回ずつ吉田キャンパス北部構内で行い,8月19~22日に徳山試験地で合宿形式ゼミ(3泊4日)を行う予定であった。
 今年は参加者6人(理1(1),工1,農4(1):()は女子内数)であったが,最終的には5人(日帰りセミナーは4人)になった。フレッシュな新入生諸君が瀬戸内の恵まれたフィールド(環境:森・里・海)に出て,自ら体験し,自然と人間の関わり方や里の意味を考えるのがセミナーの目的である。
 4月から新型コロナに対する社会の対応は混乱が続いており,それがそのまま大学にも影響を及ぼしていた。京都には来ていない新入生も相当おり,実習自体が困難とも思われた。大和先生と相談し,状況に応じて代替えプログラムを準備することにしたのは例年との大きな違いである。徳山での実習が困難な場合を想定し,代替えフィールドとして芦生研究林で森を実体験する,近畿での日帰り実習が可能なコース選定・実施要件を検討する,以上の2点に絞って徳山でのセミナーを準備しながら,並行して調整・検討を重ねた。
 7月末頃には徳山での実施が危うくなる中,芦生への日帰り実習を3 度に分けて実施した(7月28日,8月7日,8月11日)。慣れた道とはいえ,3度の往復は堪えた。代替えプログラムにおいても自動車の乗車定員に制限がでるのがコロナ禍の特徴で,如何ともし難い。また知っている場所ではあるが,学生を連れての実習となれば下見は必須である。
 結局,8月前半に徳山試験地・宿泊セミナーは諦めて,近畿・日帰りセミナーに切り替える判断を下した。その後に担当理事からの実施許可が下りた。
 8月19日(火)は大学からワゴン車2台に分乗(学生は現地集合が基本であるが,特別待遇になった)して,朝の高速道路の渋滞を体験しながら大阪市自然史博物館に到着した。午前は博物館の石田さんによる館と大阪湾及び淀川河口部についての解説。午後は大和先生が白浜から準備・携行の道具及び長靴で,十三干潟の観察を行った。当日の最高気温は38.0℃(14:00)で炎天下の調査実習になって大変だったが,これも実習の醍醐味であると理解してくれれば良いのであるが・・・。
 8月21日(木)は京都の西にある丹波の地が出発点になる。本州中央分水嶺最低標高点(海から離れた)約95m の石生(いそう)を目指して丹波高地の盆地や分水界を巡りながら,由良川水系から加古川水系に入る。自然と人及び生き物は水を通して繋がっていることを実体感出来ただろうか?加古川の上流部に点在する盆地に沿った山々には「ナラ枯れ」が見られた。闘竜灘では巨大な岩盤が川を遮っているようすを自分の目で確認した。中国縦貫道が見えてくると川幅は大きくなり周囲の段丘には農耕地や住宅地が増えて開発が進んでいる。下流部の加古川大堰までで時間切れとなった。海まで到達できずに残念であった。
 以上,多くの「前例無し」に振り回されたセミナーであったが,皆さんの協力に感謝したい。

年報18号 2020年度実習報告