古座川プロジェクトの展開:第4回古座川シンポジウム報告

里地生態保全学分野 梅本 信也


 「古座川プロジェクト」の社会連携的展開の一つである「古座川シンポジウム」は、フィールド科学教育研究センターおよび古座川流域協議会が共催、清流古座川を取り戻す会、古座川漁業協同組合、七川漁業協同組合、古座漁業協同組合等々が後援という形式で、2006年11月27日に古座川下流域に位置する古座川町中央公民館で開催され、今回で第4回を数えることなった。開催当日は古座川流域ならびに串本湾岸住民だけでなく、遠くは大阪市からの熱心な参加者もあった。平日の午後にもかかわらず、約80名の参加者を数えた。今回のシンポジウムとその内容は地域マスコミである紀伊民報、南紀州新聞において大々的に取り上げられ、さらに新聞読者からの反響も年明けまで継続し、古座川とその周辺地域の環境問題に対する関心の高さが実感された。

 今回のシンポジウムでは、「古座川プロジェクト中間報告」というタイトルのもと、(1)古座川の水質と濁り(瀬戸臨海実験所・深見裕伸)、(2)古座川の魚族多様性(農学研究科・三輪一翔)、(3)古座川の原風景復元(紀伊大島実験所・梅本信也)の合計3題の講演発表を、パワーポイントを用いて約2時間行った。まず、深見助手は、関係する漁協ならびに自治体の御協力のもと、2005年5月から古座川中流域ならびに河口沖に設置されている水質センサーがもたらす継続的データの解析結果の概要を、気象と関連付けて講演、川の濁りと湾域の濁りの関係を議論した。

 つづいて三輪氏は、2006年11月現在で第12回を数える古座川合同調査および同報告書を網羅しながら、古座川全域と串本湾における魚族の多様性とのその季節消長を、豊富な画像とともに分かり易く紹介し、希少種がたいへんに豊富な古座川流域の適正な総合保全を訴えた。

 梅本助教授は、和歌山大学紀州経済史文化史研究所所蔵の古絵葉書とその画像や古座川流域での聞き取り調査結果を用いて、明治時代後期における古座川流域とその周辺の古風景を示し、森里海連環的視座による古座川復興を行う際の原風景理解における共通基盤形成を提案する一方、ふるさと風景に関する世代間の顕著で深刻な認識ギャップを指摘、原風景教育や若年世代への迅速な原風景継承の必要性を強調した。また、高度経済成長期における河床構造の急速な変容と河床構成要素が持つ吸着作用の激的低下について言及し、流域全体で「川を洗濯しよう」と提案した。河岸、河床、河川敷を含む川自体を洗濯しようという素朴なこの提案は2007年2月14日に開催された古座川流域協議会第2回幹事会で検討議題となり、所属を超えた作業チームが編成、3月中に現地河床調査が行われることになった。

ニュースレター10号 2007年3月 社会連携ノート