カテゴリー
イベント

KDDI関西総支社での生物多様性勉強会

 2024年5月16日にKDDI株式会社において、石原林長と松岡講師によるKDDI社員向けの生物多様性の勉強会が開催されました。芦生研究林とKDDI株式会社は包括連携協定を締結しており、今後の生物多様性の維持・回復に向けた共創事業について互いに学び・議論することを目的に行われました。参加者は、KDDI株式会社ならびにKDDIエンジニアリングなど関係企業の社員、約100名でした。

 まず松岡講師から、「なぜ生物多様性に取組む必要があるのか?」というタイトルで、生物多様性とは何か、なぜ社会は多様性を大切だと考えているのか、そして企業が生物多様性への取り組みで求められることについて、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)との関連を含めて講義しました。次に、石原林長から、「企業と大学の関係「協働・共創」は「連携」と何が違うのか?」というタイトルで、企業と大学との共創とはどういったものなのか、現在KDDIと芦生研究林の協働事業に触れながら説明しました。KDDI関西総支社長からは、地球環境が危機的な状況を迎えており、それを理解し、事業を展開していかなければならないとの閉会挨拶がありました。参加した社員からは、「生物多様性についての理解が深まり、通信事業者や個人として出来ることを考えて行動したいと思った」や「生物多様性について、企業としても最優先で取り組まなくてはいけない課題の一つだと感じた」との感想が寄せられました。

次に、KDDI株式会社の見学をさせていただきました。建物と設備、通信インフラの保守・運用や災害時対応といった業務、そして人工衛星を用いた通信システムであるStarlinkの解説とデモを行っていただきました。普段は目にすることない、日本の通信を支える会社設備や、システム化された保守業務について、研究林教職員一同とても興味深く話を聞かせていただきました。

芦生研究林内は、大部分が携帯電話の通信可能エリア外であり、通信環境の向上が大きな課題です。見学中や見学後には、林内におけるStarlinkやKDDI株式会社の持っている通信技術やノウハウの適用可能性について社員と職員が意見を交換しました。加えて、芦生研究林は土砂災害等による孤立化・停電・通信不能に陥ることも多く、災害への対応体制についても、多くのことを学ばせていただきました。

芦生研究林とKDDI株式会社関西総支社は、包括連携協定のもと様々な共同事業を行っています。今回の勉強会が、今後の生物多様性に関する共創事業へと発展していくことを願っています。


 

カテゴリー
学生実習

大阪産業大学「生物資源活用演習」実習報告

 6月29日に大阪産業大学の実習が行われ、10名の学生が芦生研究林を訪れました。 林内では植生回復のための防鹿柵、大カツラの見学を行いました。学生たちはニホンジカの食害や柵による植生の回復、ツキノワグマがスギの樹皮を剥いだクマ剥ぎなどを見学し、技術職員や赤石大輔准教授(大阪産業大学)から解説を受けました。学生たちはカメ、昆虫などを見つけて写真を撮ったり、触れてみたり、興味津津でした。
 下山後にはリニューアルオープンした資料館の見学を行いました。資料館の剥製や昆虫標本などを熱心に見学されていました。

カテゴリー
学生実習

公開実習「公開森林実習Ⅰ」実習報告

 2023年公開森林実習Ⅰは、2023年9月6日(火)~8日(木)の3日間、全国の8大学から集まった9名の学生を対象に開催しました。実習目的は、京都における里山と奥山の両方を体験し、森林の歴史や現在の状況(ナラ枯れ・マツ枯れ・シカによる食害)を学習し、森林をめぐる環境問題に対し、科学的な知識や研究手法を習得すること、加えて、地域の人々の活動を体験することを通じて、人間社会と森林の関係について考察し、多面的な視野から持続的な森と人との関係のあり方を考えられるようになることです。

 初日は京都市の里山について、上賀茂試験地で講義と野外実習を行いました。上賀茂試験地では都市近郊林の自然植生とナラ枯れ・マツ枯れ被害、マツ類を中心とする外国産樹種とその特徴の解説に、受講生は興味深く耳を傾けていました。上賀茂試験地技術職員の指導のもと、チェンソーの体験を行いました。上賀茂試験地での実習の後、芦生研究林へ移動しました。夕食後に自己紹介の時間を設け、受講生から、それぞれの身近な森についてひとりずつパワーポイントを使って説明してもらいました。「身の回りの森林について発表する機会があったおかげでお互いのバックグラウンドを知ったり、それぞれの興味知ったり実習に対するモチベーションが上がったりしました。」といった声があり、良い交流の契機となりました。その後に二つのオンライン講義を行いました。最初の石原先生による「芦生の概要説明」の講義では、芦生の森林に関する基本的な情報とその重要性について学びました。続いて、遠隔地会議システムを用いて、北海道研究林の小林先生による「北海道の森林と人との関わり」についての講義が行われました。自然環境が大きく異なる北海道の森林と状況を深く掘り下げた内容でした。

 2日目は原生的森林の残る芦生研究林上谷を歩きながら、天然林・人工林の観察をしたほか、大規模シカ排除柵の見学を行いました。午後はきのこ班とトチノキ班に分かれ、きのこ相の調査やトチノキの種子の結実量調査を体験しました。受講生からは、「芦生研究林は想像していたより広大で普段見ている実習林とは異なる樹種ばかりだったのでとても新鮮で楽しかったです。」などの感想がきかれました。夕方にシカ肉料理を味わったあと、夜には美山町の猟師さんから、猟師としての暮らし、「狩猟」と「駆除」を生きる葛藤などについて話を伺いました。とても興味深い内容で、講義後は多くの質問が寄せられました。

 3日目は午前に茅葺の里や京都市右京区京北の原木市場を訪問し、午後には大学構内にある北白川試験地において北山台杉やナラ枯れの研究および j.Pod(リブフレームによる木造建築)の見学を行い、解散となりました。

 本実習には、同志社大学(1名)、鳥取大学(1名)、東北大学(1名)、琉球大学(2名)、静岡大学(1名)、福井県立大学(1名)、近畿大学(1名)、酪農学園大学(1名)、近畿大学(1名)から、農学部生だけではなく理工学部と生物資源学部の学部生の参加もありました。女性5名、男性4名、北(北海道)から南(沖縄)までの各地から集まり、意見交換が活発でした。「沖縄から北海道までいろいろな地域から同じ実習に興味を持った人が集まることで、森に対する多様な見方を知ることが出来ました。」という受講生の声があったように、今年も大変賑やかな実習となりました。