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公開実習「森里海連環学Ⅰ」実習報告

2024年8月6日~8月10日

 上記日程で2024年度森里海連環学実習Iを開催し、京都大学から5名、他大学から4名の計9名の学生が参加しました。この実習はフィールド研が開催している公開実習の一つで、京都大学に所属する大学生のみならず、他大学の大学生も参加することができます。
 この実習では芦生研究林内から若狭湾にそそぐ「由良川」を調査フィールドに設定しています。実習の目的は、水生生物の調査や水質分析を通じ、森から海までの流域を複合したひとつの生態系として捉える視点を育成する事です。

 1日目はまず、研究林内にて大カツラの見学や、河川源流域(由良川支流)での生物観察などを行いました。見学等を行った後、事務所付近(由良川上流部)に移動し、魚類・水生昆虫・付着藻類・河川水のサンプリングと水質調査を行いました。その後、由良川の中流域である京丹波町和知B&G海洋センターで同様の調査を行いました。
 この日は2地点で調査を行った後、フィールド科学教育研究センターの施設である舞鶴水産実験所に移動しました。

 2日目は由良川中流域から若狭湾まで、初日と同様の調査を4地点で行いました(河口と海では魚類、プランクトンおよび水試料のサンプリングと水質調査)。2日間で森から海までの6地点で調査を行いました。

 3日目は採取した水試料および付着藻類の分析と水生昆虫と魚類の観察と同定を行いました。
 なお,芦生研究林の技術職員2名が実習3日目まで、実習補助と実習中の安全確保を目的として同行していました。また、実習の事前準備として、中流域の調査地点の河川敷の安全確保のための草刈りと下見を技術職員4名で行いました。

 4日目は水試料および付着藻類の分析を行った後、得られたデータの整理と発表に向けてのまとめを行い、5日目に実習成果の発表を行いました。

 実習成果の発表は3つのテーマ(魚、水生昆虫、一次生産者(付着藻類とプランクトン))を設定し、各テーマと水質を関連付けた解析とまとめを発表してもらいました。解析時間もデータも限られたものの、グループごとに集中して発表準備を進めていました。

 今回初めて付着藻類の調査を実施しました。分析には時間や手間がかかったものの、定量的なデータ(河川の付着藻類量と、全地点のクロロフィルa)を得ることができ、河川の一次生産者についての解析と地点間比較が可能になりました。
 参加した学生からは「一つの川の上流、中流、下流、支流など様々な地点から観察を行うことでその繋がりを見出し理解できるようにスケジュールが組まれていたこと。そのおかげで、実習の内容がより深く理解できたと思います。」といった実習内容に関する感想の他に「先生やTAの方がしっかり付いてくださって、お話をしやすい空気だったのがよかったと思う。」といった、実習の雰囲気も良かったという感想も複数いただきました。

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大阪産業大学「生物資源活用演習」実習報告

 6月29日に大阪産業大学の実習が行われ、10名の学生が芦生研究林を訪れました。 林内では植生回復のための防鹿柵、大カツラの見学を行いました。学生たちはニホンジカの食害や柵による植生の回復、ツキノワグマがスギの樹皮を剥いだクマ剥ぎなどを見学し、技術職員や赤石大輔准教授(大阪産業大学)から解説を受けました。学生たちはカメ、昆虫などを見つけて写真を撮ったり、触れてみたり、興味津津でした。
 下山後にはリニューアルオープンした資料館の見学を行いました。資料館の剥製や昆虫標本などを熱心に見学されていました。

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京都府立林業大学校「森林科学Ⅰ」実習報告

 6月10日に京都府立林業大学校の実習が行われ、12名の学生が参加しました。「森林科学Ⅰ」という科目の一環で行われた実習です。京都府立林業大学校は、2012年に設立された西日本初の林業大学校です。詳細につきましては京都府HPよりご確認下さい。

 当日は杉尾峠から長治谷までの上谷エリアを歩きつつ技術職員の宮城(京林大卒業生)が解説を行い、その後 大カツラの見学を行いました。

 事前に石原林長が京林大で気候と植物の分布・遷移・森林生態系と生物多様性等について講義を行っており、座学での学びを実際に山に入り観察することで、より学習を深化させる狙いがあります。

 杉尾峠までの道中では暖温帯から冷温帯への植生の変化や林道の整備等についての解説を行いました。

 上谷エリアでは芦生の山を特徴づけるアシウスギ・ブナ・トチノキの解説、獣害による被害状況の解説、人と森の関りなど幅広い解説を行いました。解説に対してメモを取る学生もおり、非常に熱心な様子が伝わってきました。
 大カツラでは今まで目にしたことのないような巨木を前に歓声が上がりました。約100年前に撮られた写真とほぼ同じ姿で、現在の場所に立ち続けているその様子に感動していた学生もいました。

 下山後には特別に資料館の見学も行いました。オープン前のため一部資料の解説がない状態でしたが、学生さんは全ての展示物に興味をもって見学されていました。

 実習全体を通して、林道の整備や重機操縦、特用林産物についてなど、技術職員ならではの解説もあり、よかったとご意見いただきました。

 京林大の実習では人工林の見学が非常に多く、芦生の山のような原生的な森に入ることは少ないです。芦生の原生的な自然やそこでの保全・教育・研究活動を学んでいただき、卒業後には生態系の在り方などについても考えられる、広い視野を持った森林・林業技術者になって活躍されることを期待します。

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東邦大学「野外生態学実習」実習報告

 2024年5月27-31日 東邦大学の学生実習「野外生態学実習Ⅱ」が行われ、20名の学生が参加しました。
 
 29日には上谷で植生や生物相を見学しました。参加した学生は普段見ることができない冷温帯林の構成樹種であるミズナラやブナの解説を興味深く聞いていました。また、上谷の支流で水生生物の観察を行いました。
全員で一生懸命に石の下を探し、サンショウウオの幼生や水生昆虫を見つけました。
 
 他の日程は森林軌道で爬虫類、両生類の観察を行いました。学生達は興味のある植物や動物を見つけると写真を撮影し、同定していました。

 芦生研究林での経験や生物観察から、大学に帰った後も学びを深めてもらえたらと思います。

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大阪公立大学「緑地保全学研究グループ実習」実習報告

 2023年10月17日~10月19日

 上記日程で大阪公立大学の実習「緑地保全学研究グループ実習」が行われ、学生15名が参
加しました。

 1日目は森林軌道で植物採集、2日目は大規模防鹿柵の見学と植生調査、3日目は幽仙谷か
ら落合橋の区間で植物採集を行いました。
 参加学生は植物への関心が高く、普段は見ることができない日本海型の植生を意欲的に学
んでいました。
 
 3日間とも秋晴れに恵まれ、紅葉が始まった芦生研究林の植生を堪能してもらえたと思い 
ます。

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京都大学「森林利用学実習」実習報告

9月25日-9月29日

 上記日程で京都大学農学部の実習である2023年度「森林利用学実習」を開催しました。初日は南丹市美山町大野にて美山森林組合の伐採現場を見学し、プロセッサやスイングヤーダといった高性能林業機械の見学、伐採から市場までの木材の流れ等を作業員の方の説明を聞きながら見学しました。
 2日目は研究林内にてコンパス測量を用いた森林調査プロットの設定、毎木調査、樹木位置おとし、樹幹投影図作成を行いました。
 3日目は研究林にて、職員による立木伐採の見学、輪切り体験、木材の現存量調査を行いました。最終日は、講義室にて3日間のデータのまとめ、発表を行った後、北桑木材センターに向かい、社長による木材市場の説明、見学を行い実習終了となりました。

 伐採現場の見学から始まり、木材の流通を行っている市場を最後に見学することで、立木が伐採されてから売り払われるまでの過程をしっかり勉強できたと思います。また、自分たちも調査、作業を行うことで林業の大変さもわかり、良い経験になったと思います。

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公開実習「公開森林実習Ⅰ」実習報告

 2023年公開森林実習Ⅰは、2023年9月6日(火)~8日(木)の3日間、全国の8大学から集まった9名の学生を対象に開催しました。実習目的は、京都における里山と奥山の両方を体験し、森林の歴史や現在の状況(ナラ枯れ・マツ枯れ・シカによる食害)を学習し、森林をめぐる環境問題に対し、科学的な知識や研究手法を習得すること、加えて、地域の人々の活動を体験することを通じて、人間社会と森林の関係について考察し、多面的な視野から持続的な森と人との関係のあり方を考えられるようになることです。

 初日は京都市の里山について、上賀茂試験地で講義と野外実習を行いました。上賀茂試験地では都市近郊林の自然植生とナラ枯れ・マツ枯れ被害、マツ類を中心とする外国産樹種とその特徴の解説に、受講生は興味深く耳を傾けていました。上賀茂試験地技術職員の指導のもと、チェンソーの体験を行いました。上賀茂試験地での実習の後、芦生研究林へ移動しました。夕食後に自己紹介の時間を設け、受講生から、それぞれの身近な森についてひとりずつパワーポイントを使って説明してもらいました。「身の回りの森林について発表する機会があったおかげでお互いのバックグラウンドを知ったり、それぞれの興味知ったり実習に対するモチベーションが上がったりしました。」といった声があり、良い交流の契機となりました。その後に二つのオンライン講義を行いました。最初の石原先生による「芦生の概要説明」の講義では、芦生の森林に関する基本的な情報とその重要性について学びました。続いて、遠隔地会議システムを用いて、北海道研究林の小林先生による「北海道の森林と人との関わり」についての講義が行われました。自然環境が大きく異なる北海道の森林と状況を深く掘り下げた内容でした。

 2日目は原生的森林の残る芦生研究林上谷を歩きながら、天然林・人工林の観察をしたほか、大規模シカ排除柵の見学を行いました。午後はきのこ班とトチノキ班に分かれ、きのこ相の調査やトチノキの種子の結実量調査を体験しました。受講生からは、「芦生研究林は想像していたより広大で普段見ている実習林とは異なる樹種ばかりだったのでとても新鮮で楽しかったです。」などの感想がきかれました。夕方にシカ肉料理を味わったあと、夜には美山町の猟師さんから、猟師としての暮らし、「狩猟」と「駆除」を生きる葛藤などについて話を伺いました。とても興味深い内容で、講義後は多くの質問が寄せられました。

 3日目は午前に茅葺の里や京都市右京区京北の原木市場を訪問し、午後には大学構内にある北白川試験地において北山台杉やナラ枯れの研究および j.Pod(リブフレームによる木造建築)の見学を行い、解散となりました。

 本実習には、同志社大学(1名)、鳥取大学(1名)、東北大学(1名)、琉球大学(2名)、静岡大学(1名)、福井県立大学(1名)、近畿大学(1名)、酪農学園大学(1名)、近畿大学(1名)から、農学部生だけではなく理工学部と生物資源学部の学部生の参加もありました。女性5名、男性4名、北(北海道)から南(沖縄)までの各地から集まり、意見交換が活発でした。「沖縄から北海道までいろいろな地域から同じ実習に興味を持った人が集まることで、森に対する多様な見方を知ることが出来ました。」という受講生の声があったように、今年も大変賑やかな実習となりました。

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京都大学「ILASセミナー:森での感動を科学する」実習報告

 ILASセミナー「森での感動を科学する」が9/4~6の日程で行われ、9人の学生が参加しました。

 脳波測定や表情認識AIなどを用いることで、森がヒトに与える影響を測定する実験が大カツラ周辺で行われました。

 3つのグループに分かれた学生たちは、沢の水に足をつけたりコケの感触を確かめたり等、林内での体験を楽しみながら、自ら考えた実験デザインに沿って脳波や表情の変化などのデータを集めていました。

 この実習では、自らが実験の被検体になるため、自身が感じたことをデータとして客観的に見ることになります。どのグループでも直観とは異なる結果が多くあったようでしたが、最終日の発表は、それらにも丁寧に向き合ってまとめられた良い発表ばかりでした。

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京都大学「研究林実習Ⅰ」実習報告

 8月28日-9月1日
 上記日程で京都大学農学部の実習である2023年度「研究林実習I」を開催しました。8月28日午後~8月30日午前と、8月30日午後から~9月1日午前までの前半・後半の2グループに分かれての実習でした。前半グループの参加者は16名で、後半グループの参加者は28名でした。
 前半・後半とも実習内容は同じで、実習1日目は林内の標高が低い場所で樹木識別を行いました。
 2日目は林内の標高が高い場所で樹木識別や、林内の大規模防鹿柵の見学等を行いました。
 また、代表的な樹木の腊葉(さくよう)標本作成を通じて、樹木の観察や識別のポイントを学びました。
 標高により自生している樹種に違いがあることや、鹿の影響による林内植生の変化等を、実地にて学ぶことができたと思います。

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人間環境大学「奥山・里山管理実習」実習報告

 2023年8月23日~25日

 上記日程で人間環境大学の学生実習「奥山・里山管理実習」が開催され、学生18人が参加しました。この実習では奥山と里山の森林植生の違いや森林で起きている様々な問題を学ぶことを目的としています。

 1日目は上賀茂試験地で、技術職員の解説で里山や斧やチェーンソーによる薪づくりの見学などを通じて、里山の生態系と暮らしについて学びました。
 2日目は芦生研究林の見学と調査体験を行いました。午前中は林内散策や大規模シカ柵を見学しながら奥山の自然林について学びました。午後からはトチノキの調査、きのこの調査、人の営みと歴史の学習の3班に分かれて、それぞれの研究者の解説で芦生の自然や歴史を深く学びました。
 3日目は美山かやぶきの里で里地での暮らしを見学しました。その後、北白川試験地に移動して、技術職員の解説でj.Pod工法による建物の見学などを行ったあと、実習のまとめと意見交換を行いました。

 この実習では奥山と里山を研究・管理する複数の教職員からの解説がありました。これらの話から、森林の特徴に加えて、それぞれの場所で働く人と森の関りを学んでいただけたら幸いです。