知ろう、守ろう芦生の森シンポジウム 開催報告

森林資源管理学分野 教授(芦生地域有害鳥獣対策協議会会長) 吉岡 崇仁

(ニュースレター用原稿)

 このシンポジウムは、芦生地域有害鳥獣対策協議会、フィールド研などの共催により、12月8日㈯午前10時から午後3時までの日程で、京都大学北部総合教育研究棟益川ホールにて開催されました。昨年の「知ろう、守ろう芦生の森シンポジウム-芦生の森が問いかけているもの-」(FSERCNews No.25にて報告)に続く第2回目のシンポジウムです。
 京都大学農学研究科の高柳敦講師から「芦生の豊かな森の再生に向けて-シカ害対策と貴重な植生回復への取組-」と題する基調講演で、「芦生生物相保全プロジェクト」での活動を中心としてシカ食害影響に関する研究が詳細に報告されました。豊かな森、自然を残すことは、現世代の責任であり、人間に対してだけではなく、生物や地球に対する責任でもあると強調されました。基調講演に続いて、様々な立場で芦生の森で活動している方からの報告がありました。南丹市猟友会の藤原誉さんからは、有害捕獲事業の問題点と共に、シカを捕獲するだけでは殺生になる、獲ったシカの肉をありがたくいただくことで供養になるというお話がありました。昼食時には、シカ肉料理が試食として供され、昼食会場(京都大学北部生協喫茶ほくと)では講演内容についての意見交換が行われるなど大盛況となりました。午後のパネルディスカッションでは、午前の部での講演者への質問のほか、「豊かな森」を守るための質問や提案が活発に出されました。100名を超える参加者があり盛況なシンポジウムとなりました。

ニュースレター29号 2013年2月 社会連携ノート


(ウェブページ用原稿)
 2012年12月8日に、「知ろう、守ろう芦生の森シンポジウム-豊かな森の再生に向けて-」を京都大学北部総合教育研究棟益川ホールにおいて開催し、約140名の参加があった。このシンポジウムは、芦生地域有害鳥獣対策協議会、京都大学フィールド科学教育研究センター、南丹市および京都府南丹広域振興局が共催し、NPO法人芦生自然学校と公益社団法人京都モデルフォレスト協会の後援を受けたものである。
 高柳 敦 京都大学農学研究科・講師による基調講演「芦生の豊かな森の再生に向けて」では、「芦生生物相保全プロジェクト」での活動を中心としてシカ食害影響に関する研究が詳細に報告された。また、「スチュワードシップ」という語を用いて、豊かな森、自然を残すことは、現世代の責任であり、人間に対してだけではなく、生物や地球に対する責任でもあると強調された。この責務を果たすために、地域住民やボランティアなど裾野の広い活動が必要であると述べられた。
 『「知ろう」芦生の森からの活動報告』では、まず、協議会関係者4名がそれぞれの立場から、活動内容が報告された。特に、シカの有害捕獲実施者である藤原氏からは、捕獲事業の問題点と共に、シカを捕獲するだけでは殺生になる、獲ったシカの肉をありがたくいただくことで供養になるという発言には重みが感じられた。長谷川芦生研究林長からは、芦生研究林の歴史、特徴が紹介され、研究林の今後のあり方についても議論された。
 昼食時にはお弁当に加えて、藤原氏が用意したシカ肉料理が試食として供され、昼食会場(京都大学北部生協喫茶ほくと)は大盛況であった。シンポジウムの内容と共鳴し相乗効果があったものと考えられる。
 午後のパネルディスカッションでは、午前の部での講演者への質問のほか、「豊かな森」を守るための質問や提案が活発に出された。議論の多くに共通したのは、森を守るためにはまず森のことをよく知ってもらい、興味を持ってもらうことが重要であるということであった。美山町自然文化村の大野氏からは、エコツーリズム等のイベントでのリピータ率が3割程度と高いことから、芦生の森のすばらしさを知ってもらえていること、芦生の森の危機的現状についても認識してもらえていることなどが紹介された。森や自然を「守る」ことへの教育の貢献についても議論がなされた。漁業関係者からは、森と川のつながりに関する話題が出され、フィールド研が提唱している森里海連環学についても紹介することができた。
 会場となった益川ホールのエントランスでは、芦生自然学校、マイクロ発電、フィールド研の芦生シカ排除実験に関するパネル展示があり、フィールド研関係者のシカ食害研究成果が掲載されている「森林研究」第77・78号が展示・提供された。
 今回のシンポジウムでは、準備と当日の開催にあたって多くの関係者のみなさんにご協力いただいた。ここに記してお礼申し上げる。

(参考)
シンポジウム案内ページ (プログラムなどはこちらを参照下さい。)