瀬戸臨海実験所における避難誘導マニュアル作成と防災訓練

瀬戸臨海実験所長 教授 朝倉 彰

 東日本大震災のあと日本各地で想定される大地震の規模と津波高の予測値が見直され,瀬戸臨海実験所の立地する和歌山県の白浜町では,南海トラフ大地震の際に想定される最大震度は7,津波の最大高は15m となった。このことに鑑み,実験所としての災害に対する新たな取り組みを行うことになった。
 瀬戸臨海実験所では年間を通じて京都大学,近畿圏の大学,近畿圏の高校など多くの臨海実習が行われ,多数の学生と教職員が利用している。また附属白浜水族館は年間入場者数が6 万人以上を数える。このためこうした大地震と津波に対する対策としては,実験所所員が避難するのみならず,多数の外部からの利用者をいかに迅速かつ安全に誘導し避難するかが課題となる。
 そのためまず避難誘導マニュアルを作成した。これは日本語版と英語版の2 つがある。実験所では標高30m に位置する実験所に隣接する南方熊楠記念館に協力を要請し,ここを一時避難の場所としている。マニュアルは,大地震と大津波の際の行動の指針,南方熊楠記念館への安全な避難ルートを示したもので,実験所職員が持ち,外来研究者や臨海実習の引率者に配布し,また臨海実習の際には実際に避難ルートを実地で教えている。
 また白浜消防署,白浜町役場,京大安全管理課の指導のもと12 月11 日に避難訓練を実施した。想定としては,臨海実習の団体と水族館の一般客が訪れている時間帯に大地震と大津波が発生,水族館では負傷者が出たとし,職員が手分けして,宿泊棟にいる臨海実習団体の南方熊楠記念館への避難誘導,水族館では負傷者を担架で運ぶとともにそこにいた来館者ともども南方熊楠記念館への避難誘導を行った。地震が発生してから津波がくるまでは白浜町では15 分とされているが,訓練では10 分で全員が避難することができた。訓練のあと白浜消防署と京大安全管理課から講評をいただいたが,おおむね良い評価をいただいた。

年報10号  2013年11月 p.10