第5回時計台対話集会「森里海のつながりを生物多様性から考える」

里山資源保全学分野 長谷川尚史


 これまでの時計台対話集会では,フィールド研の研究の柱「森里海連環学」について,参加者の皆様と一緒に考え,貴重なご意見をいただいてきました。今年5月に国会で「生物多様性基本法」が成立し,今後すべての人間活動において「生物多様性」が重要なキーワードとなることが予想されます。そこで5回目となった今年度の時計台対話集会は,「森里海連環学」を「生物多様性」という観点からあらためて捉え直すため,「生物多様性」に関して活発な研究活動を行っている京都大学生態学研究センター(以下,生態研)との共催で9月28日(日)に開催しました。
 今回の時計台対話集会は三部構成となりました。白山義久フィールド研センター長と尾池和夫京都大学総長の挨拶で開会し,第一部の講演会では,京都大学の卒業生で国民森林会議会長を務められている只木良也名古屋大学名誉教授から「原生林も里山も地域の宝」,北海道大学厚岸臨海実験所長時代に京都大学と北海道大学との合同学生実習「森里海連環学実習」を創設された向井宏北海道大学名誉教授から「水と砂の流れと生物多様性」と題して,それぞれ講演をいただきました。両先生の長年の貴重な研究成果に加え,これからの自然との付き合い方について,ご自身の豊富なフィールド経験を交えた大変奥行きのある話題提供をしていただきました。また第一部の後には長めの休憩を取り,多くの皆様に同時開催のパネル展示をご覧いただきました。
 第二部のパネルディスカッションでは,フィールド研の益田玲爾准教授をコーディネーター,フィールド研の吉岡崇仁教授,上野正博助教,生態研の椿宜高教授,谷内茂雄准教授,奥田昇准教授をパネラーに迎え,それぞれの研究と生物多様性や社会との関わりについて,お話しをいただきました。時間の都合で詳細な議論には至りませんでしたが,芦生や舞鶴などフィールド研の有するフィールドでの生物多様性の変化や,琵琶湖での生態系の変化,琵琶湖-淀川水系での地域住民や自治体,各種団体を含めた流域ガバナンス(統治)の取り組みなど,最先端の研究や社会貢献について興味深い話題が紹介されました。
 第三部では,前回に続きアウトドアライター天野礼子さんの司会で,楽しく,かつ時には辛辣な批判を含めて,会場との対話を行いました。今回のテーマや話題提供はやや専門的なものが多く,会場から意見が出にくい場面も見られましたが,大学人として研究と社会との結び付きの重要性を認識させられる,貴重な意見も多くいただきました。
 最後に高林純示生態研センター長にご挨拶いただき,第5回時計台対話集会は閉会しました。今回の時計台対話集会は,これまでと違ってややアカデミック色の強いものになったにもかかわらず,280人もの皆様にご参集いただきました。話題が絞りきれなかったことなど反省点も多々ありますが,これらは次回以降の時計台対話集会で改善していきたいと考えております。最後になりましたが,お忙しい中ご参加いただいた皆様にこの場をお借りして心より御礼申し上げます。

ニュースレター15号 2008年11月 ニュース

白山 義久センター長の報告は こちら