白浜水族館の新装開館

瀬戸臨海実験所 加藤 哲哉

 京都大学白浜水族館(瀬戸臨海実験所附属水族館)は、1930年に開館した歴史ある水族館です。しかし、建物は建築から時間がたっており、電気・機械設備の老朽化も進んでいました。このたび、建物の耐震化工事とあわせて各種設備および内外装の改修工事をすることができました。2013年11月より2014年3月まで改修工事を行い、3か月の準備期間を経て、7月5日に新装開館しました。
 工事内容は多岐にわたりますが、建築関連では1971年建築で鉄筋コンクリート地上3階建てである第1水槽室の耐震化に加えて、第1から第4水槽室を含むすべての建物で外壁のひび割れ補修と外壁塗装および屋上防水のやり替えを行いました。また、一部の水槽で漏水の補修とガラス面を拡大する工事を行い観察しやすさを改善しました。観覧通路は、内装を刷新して濃いブルーを基調とした落ち着いた雰囲気にするとともに、過去複数回の部分的改修工事のため場所によりばらばらだった案内表示の統一化を図り、導線が悪く迷いやすかった箇所を改善しました。また、これまでは入館をためらって引き返してしまう方もあるほど地味だった水族館入口を改善し、明るく展示に期待感を持たせるようなものにしました。これまで屋外にあった券売機と改札口を新たに設けた風除室内に取り込み、雨天時でも快適になりました。さらに、老朽化していた電気機械設備を更新し、省エネルギー化の点から、水槽照明を含む全館の照明の LED 化と、外壁の断熱による空調効率の改善をはかり、小規模ではありますが屋上に太陽光発電システムを設置しました。
 新装開館に先立って、7月4日には、学内ならびに白浜町の関係者合わせて36名を招待し、記念式典ならびに内覧会を開催しました。記念式典では、井澗誠白浜町長、番所山を拠点とした臨海地域活性化協議会の片田和雄会長、先の瀬戸臨海実験所所長である独立行政法人海洋研究開発機構の白山義久理事に祝辞を賜りました。引き続いて、宮﨑勝己講師より「京都大学白浜水族館の歴史」、朝倉彰現所長より「京都大学白浜水族館における教育活動」の記念講演がありました。
 新装開館の最初の2日間は無料開放とし、実験所教員による展示生物の解説を行いました。また、各日先着300名に新装開館を記念したオリジナルポストカードセットを配布しました。両日で当初予想を超える約5,500人の来館者があり、きわめて盛況で、駐車場が限られているため駐車待ちの車列が生じ、職員が駐車場整理に追われるほどでした。来館者からは、新装開館を楽しみに待っていた、水槽が見やすくなった、内装がきれいになったのは良い、など好評の意見をいただきました。
 展示内容は、従来の基本方針である、地元紀伊半島南部の海の生物を展示すること、海産無脊椎動物の多様性を見てもらうこと、を踏襲しているため大きな変化はありませんが、小型の動物を展示するためのスペースを拡充しました。全体的には、観覧通路の壁面を濃いブルーで暗くしたのに合わせて、水槽照明を LED で明るくしたことから以前より生物が見やすくなった印象です。
 今年の夏休み期間(7月19日~8月31日)の有料来館者数は21,310人で前年度比73%増と、例年以上に多くの方に来館いただきました。これからもできるだけ多くの方に来ていただけるよう、展示を充実させていきたいと考えています。

ニュースレター34号 2014年10月 社会連携ノート
年報12号 2014年度