GIS データの整備と利活用

GIS データの整備と利活用

芦生研究林 奥田 賢

 GIS は Geographic Information System(地理情報システム)の略で、コンピュータ上で位置データとそれに対応する情報データを関連付けて、表示、検索、分析するシステムのことです。GIS ソフトウェアには ArcGIS や TNTmipsなどの有料のものから、QGIS や GRASS などの無料のものまで多数あります。これら以外にも身近なもので、カーナビや GoogleEarth、電子地図なども広義の GIS といえます。
 GIS は図面情報と帳簿情報を同時に取り扱えるので、位置情報を持ったデータベースとして利用ができることに加え、距離や面積の計測、地形解析などもできます。そのため、都道府県や市町村、国有林、森林組合など様々な林業事業体でGISが導入され、森林施業計画などに活用されています。フィールド研森林系施設でも GIS を導入し、林班情報や路網情報、林相図などの基盤データの整備を進めてきています。
 上賀茂試験地では外国産樹種を導入・育成しており、構内には国内外の多くの樹種が見本樹として植栽されています。それら見本樹の管理に GIS を利用しています。GIS 導入以前は3つの台帳と、植栽位置図を併用して管理していましたが、GIS を導入したことでそれらの情報を一元的に管理できるようになり、作業が簡略化されました。また、GIS の検索機能によって、目的とする樹種の植栽位置が容易に把握できるため、図面としての利便性も飛躍的に向上しました。
 和歌山研究林は人工林率の高い施設であり、人工林施業に関する実験の場として活用されています。ここでは、造林地の図面データとプロット調査のデータ等を GIS でリンクさせることで、各林分の平均胸高直径や本数密度、ヘクタール当たりの材積、林齢などを、色調の違いで図示できるようになりました。また、間伐の指標の1つである収量比数も図示でき、間伐遅れの林分がどこにあるのかもひと目で分かるようになったことから、間伐計画などを立てることが容易になりました。
 今後は、モバイル端末を利用して GIS データを現場に持ち出せるようなモバイル GIS や、研究者や一般の利用者へ広く情報を発信するための WebGIS の構築が考えられますが、それらの構築によって利便性はいっそう増すと思われます。

ニュースレター37号 2015年11月 技術ノート