WakWak創世記-WakWakプロジェクト・レポート-

沿岸資源管理学分野 上野 正博


 創世記やから、やっぱり入りはツアラトゥストラかねぇと、しょーもないことを独りごちていると、目の前にタッチアンドゴーのヘリがグアッと迫る。「あほっ、それはコッポラ。お前が出てきたら話が終わるやろ。墜ちてしまえ」と、昨秋の台風でバスの屋根から人々をつり上げ、日本中から喝采を浴びたヘリに悪たれをかます。
 それにしても、とにかく走り始めようと昨年の初夏にスタートしたWakWakプロジェクト(FSERC News No.2を参照)は、初手から台風連発という手厳しい歓迎を受ける羽目に。6月11日に大阪に上陸した4号を皮切りに、6、10、11、15、16、18、21、22号と立て続け、お盆が空けてからは、ほぼ10日に一回の定期便。海の仕事は台風が行ってしまえば、翌日でもできるのだが、川の方は大雨の増水でヘタすると一週間くらいは近づくこともできない。川と海って全然違う環境なんだと、改めて思い知らされた次第。
 そして、極めつけは10月20日に上陸し、近畿北部に50年ぶりの大水害をもたらした23号。実験所教職員の自宅も浸水したり孤立したり、道路は至る所で崩れ、WakWakで調査している野田川も伊佐津川も大氾濫。結局、初年度の調査は洪水で増水・氾濫した後の特殊な事例の積み重ね。
 さて、洪水の被害の重大さに本当に気づかされたのは今年度になってからのこと。河口から2キロ程度の範囲に限定していた初年度の調査結果を眺め。これではアカンなぁと、上流域の調査を開始してから。
 ほとんど雨が降らなかった耳川を除き、野田川、伊佐津川、佐分利川の上流部はそこここで植林地が大地滑り。大量の土砂が流入した河川を修復するために、重機が川に入り走り回っている状態。もっともひどい野田川は中流域の5キロばかりが、川底は瀬も淵もなく真っ平らに削り取られ、両岸は堤防補修のサンドバックの列。
 「これどこで調査するよ」「笑うしかありませんなぁ」...でも、洪水のおかげで川底の石の間に堆積していた生物膜やヘドロがきれいさっぱりと流れ去り、川がやたらにきれいなのは確か。調査を継続すれば、また元のぬめっとした川に戻っていく過程が追跡できるかも。

ニュースレター5号 2005年 7月 研究ノート