種子生産調査(森林生態研究プロジェクト)レポート

森林生態保全学分野 嵜元 道徳


 センターの研究林・試験地では、森林樹木の生活史解明の一環として、森林樹木の種子生産量の大規模調査を2003年度から行っています(FSERC News No.1 (森林生態研究プロジェクト)を参照)。
 今回は、そのミニ報告です。調査を始めた2003年度は、いずれの研究林・試験地においても並作程度の木の実が稔っていました。しかし、昨年度の各研究林・試験地における種子生産はほぼ凶作となっていました。昨年、本州各地で人里へのクマの出没が話題となり、その原因は度重なる台風の襲来による森林樹木の木の実の凶作にある可能性が指摘されています。各研究林・試験地の昨年の結果はその可能性を裏付けており、ツキノワグマが生息する芦生は特にひどい凶作となっていました。一方、凶作の翌年の種子生産は生態学的に興味深いことです。今年の春からの各研究林・試験地における樹木の開花現象は、いずれも最近では稀に見る一斉大開花となっています。今年、もし台風の襲来が少なく、気象が穏やかであれば、秋の森の稔りは大豊作になることが大いに期待されます。
 樹木の生活史や森林の動態・維持メカニズムを理解する上では、種子生産の豊凶は重要な情報の一つとなります。昨年の凶作に続く大豊作(?)は滅多に見られない現象です。これを把握できることは極めて幸運ですし貴重なことです。しかし、仕分け作業をする身には大変な年になりそうで、うれしいやら、悲しいやら、戦々恐々(?)として森を見守っています。

ニュースレター5号 2005年 7月 研究ノート