高校生対象スプリングサイエンスキャンプ

里海生態保全学分野 山下 洋


 サイエンスキャンプは文部科学省が主催し日本科学技術振興財団に委託して実施される、高校生を対象とした科学技術体験合宿プログラムである。舞鶴水産実験所において、平成17年3月19日(金)~21日(月・祝)にスプリングサイエンスキャンプ「魚類生態学入門コース-魚の子供達に焦点を当てて-」を開催した。全国の高校生に参加募集した結果、松下電器、日立、東芝、味の素、鹿島建設など一流の企業研究所が会場として並ぶ中、当実験所は8倍以上の競争率となり(募集人員15名)22会場中3番目の人気であった。志望動機の作文により参加者を選考し、最終的に16名の参加を認めた。参加者はいずれも自然や生物に強い興味と知識を持ち、熱意と活気にあふれる実習となった。
 具体的なテーマとして、沖合で産卵され成育場である河口域へ移動してくるスズキの稚魚の生態をとりあげた。実際に由良川河口域で稚魚を採集し、分布水深、ふ化日、成長速度、餌や捕食者となる生物について分析した。16名を4班に分け、岸からの採集と緑洋丸による沖からの採集の2通りの方法で採集調査を行った。幸いに好天に恵まれ、前日の講義において予測したとおりの場所で稚魚が採集されたので、実験所の教員も大変安堵した。採集試料を水産実験所に持ち帰り、動物の名前を同定して群集構造を調べるとともに、スズキ稚魚の耳石を取り出して金属顕微鏡下で日輪を計数し、個体ごとにふ化日と成長速度を推定した。内容的には京都大学農学部の2回生が行う実習に近いものがあり、高校生にとってはやや難しかったかもしれないが、微少な耳石の取り出しにも徐々に慣れ、全員が耳石を取り出してふ化後の日齢を計数することができた。
 今回は参加した高校生の熱心さが神様に通じたのであろうか、キャンプを実施した3日間のみ見事に晴天となったが、その前後は春の嵐であった。いつも今回のように天候に恵まれるとは限らない。採集調査の日が悪天候の場合の対処は、今回の実習に限らず水産実験所実習の重要課題である。今回のキャンプを通して、参加した高校生の全員が海洋生物学に対して強い興味を持ってくれたと確信している。また、休日出勤をお願いした教職員や手伝いをしてくれた大学院生(TA)にお礼申し上げる

ニュースレター5号 2005年 7月 教育ノート