世界へはばたく全日空とフィールド研の協定締結

フィールド科学教育研究センター長 田中 克


 21世紀の最も大きな地球的課題は環境問題と考えられる。それは全ての生きものの生存に関わり、他の地球的課題である食料問題や資源エネルギー問題とも深く関わる基本的課題であることによる。フィールド科学教育研究センター(フィールド研)は、京都大学の地球環境科学研究構想の一環として、2003年4月に発足した。当センターは、21世紀型の統合科学として森と里と海のつながりに関する新しい学問領域“森里海連環学”の創生を目指し、様々な取り組みを行ってきた。特に昨年夏には本学総合博物館企画展として「森と里と海のつながり-京大フィールド研の挑戦」や時計台対話集会「森と里と海のつながり-“心に森”を築く」に力を注ぎ、地球生命体の循環系や免疫系とも言える森と里(川)と海のつながりの重要性とその自然科学的ならびに文化・文明論的解明の今日的意義を社会に訴えてきた。
 地球環境問題解決への取り組みは、学校教育場に限らず様々な個人・団体・企業などによる多様な広がりを見せている。とりわけ、先進的な企業は環境問題への取り組みを自社の基本理念として、対外的な社会貢献活動を展開している。日本の翼を代表する全日本空輸株式会社(ANA)も環境・社会貢献部を立ち上げ、ANA便が就航する全国40数空港近隣において「私の青空・森づくり」活動を2004年より展開されている。この森づくり活動の中でフィールド研の森林関係の先生を青空教室の講師に招いたり、森づくりの専門的な助言を求めるなどのつながりが生まれた。このANAの森づくり活動は、10年計画で進められるため今後フィールド研との連携が一層深まる可能性が高く、またフィールド研のいくつかの研究林でも森づくりを進めたいなどの要望が提起された。一方、フィールド研は、森里海連環思想を教育・研究・社会連携活動の中で普及することを願い、多様な取り組みを進め、連携のカウンターパートを求めてきた。こうした2つの組織の活動は自然に共鳴することとなり、2004年12月21日に京都大学において「森・里・海の環境再生教育に関する合意書」調印式が行われることになった。
 その主な内容は以下のとおりである。
1.フィールド研は、ANAが国内で展開する「私の青空・森づくり」に協力し、現地において「京都大学フィールドセミナー(青空塾)」を開講する。
2.ANAは、フィールド研が持つ森林域・里域・海域の各施設の市民教育への開放を支援する。
3.フィールド研とANAは、エコツアー「フィールドツアー(仮称)」を共同で企画開発する。
4.ANAは、フィールド研が進める森里海連環に関する市民参加型研究を支援する。
 フィールド研にとってANAとの協定は、今後の多様な環境再生教育を展開する上で大変大きな力になると期待される。それは1つには、ANAの森づくりは全国展開であり、フィールド研の理念である森里海連環思想(つながりやめぐりの価値観再生)の全国的普及に大きな力を発揮すると期待されるからである。フィールド研は、北海道から九州に至る複数のモデルフィールドにおいて森里海連環研究の展開を目指している。中でも、世界遺産の指定を受けた神々が宿る熊野の森、黒潮洗う串本湾、それらをつなぐ清流古座川を森里海連環学発祥の地にすべく、教育・研究・社会連携を総合した“古座川プロジェクト”を展開し始めている。この研究では、ANAがその特技を発揮されて空からの調査に加わり、地上調査とリンクする可能性、あるいは近い将来始める予定の間伐の効果をみる試験研究にANAがボランティアの市民参加を支援するなど市民参加型研究の展開が待望される。今後、両者は協定の趣旨にのっとり、具体的な活動を共同で展開し、“異色のコンビ”が社会貢献に新たな道を開きたいと願っている。

ニュースレター4号 2005年 2月

(参考)
 調印式の報告ページ 合意書文書
 合意書 (PDFファイル)