太田 満 技術専門職員に社団法人日本動物学会より感謝状受贈

2007年9月21日、瀬戸臨海実験所 太田 満技術専門職員に、社団法人日本動物学会より感謝状が贈呈されました。

 この度、フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所 太田 満技術専門職員の長年にわたる海洋生物学の学校教育・社会教育に対する支援活動への貢献に対し、日本動物学会より感謝状が贈呈されました。贈呈理由は次のとおりです。
 太田 満氏は、昭和39年に京都大学理学部附属瀬戸臨海実験所(現フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所)に技術見習として就職して以来、今日まで43年の長きに亘り、海洋生物学の教育・研究・施設の維持管理などの支援業務を積極的に果たしてきた。特に実験水槽室を一般公開している水族館の飼育担当として、国立大学法人では全国で唯一の博物館相当施設である京都大学白浜水族館(以下水族館)の水族の維持管理に不可欠の人材として活躍している。
 瀬戸臨海実験所の利用者は実験所の教員・大学院生だけではなく、他大学の臨海実習生、外国人を含む学内外の研究者も多い(平成18年度:延べ4198人・日)。こうした教育・研究が必要とする生物材料は多種多様に及び、フィールドにおける生息状況、採集器具類の知識や飼育観察に必要な海水や水温条件、水槽や濾過装置の維持などの協力が不可欠である。特に水族館の飼育担当としての知識と経験を活かし、飼育が困難な水族についても、研究者に常に状態の良い材料を提供してきた。
 太田 満氏氏はこうした利用者の要望に協力を惜しまない中で、実験そのものにも積極的に参加してきた。近年、世界的な注目を浴びている大気二酸化炭素濃度の上昇に伴う海水の酸性化が海洋生態系に与える影響の問題は、1年以上にわたる長期飼育実験によって初めて明らかになったものであるが、氏の協力なくしては成功しなかったものである。
 太田 満氏氏はさらに水族館の飼育担当という職務の内容について、常に積極的に改良と工夫を重ねてきた。例えば、ししおどし式のエアレーション装置を工夫し、従来飼育の難しかった潮間帯生物に関して、安定して長期に飼育することができる画期的な飼育水槽を開発した。また、刺胞動物・環形動物などの水中の懸濁有機物を摂食する種群に最適の給餌方法を開発し、触手の拡がった自然に近い状態でイボヤギなどの動物を観察することを可能にした。
 上記のような成果は日本動物園水族館協会の飼育係研修会において口頭発表をするとともに、「Mar. Fresh. Behav. Physiol.」、「Publication of the Seto Marine Biological Laboratory」、「Proc. 2nd International Symposium on Ocean Sequestration of Carbon Dioxide」、「瀬戸臨海実験所年報」、「南紀生物」、「くろしお」、「日本動物園水族館雑誌」などの生物関係誌に発表している。その表題の一部を紹介すると、

・Predation on symbiont sea anemones by their host hermit crab Dardanus Pedunclulatus.
・Long-term effects of sublethal increase of CO2concentration on three marine benthic invertebrates.
・Many Records of Hermatypic Scleractinian Gorals that Grew on Molluscan Shells
・水槽内で自然繁殖するヒメイソギンチャクに対する沿岸性動物の補食効果
・和歌山県白浜で初めて発見された6腕のトゲイトマキヒトデ(ヒメヒトデ目、イトマキヒトデ科)
・水槽内で自然繁殖するヒメイソギンチャクに対する沿岸性動物の補食効果
・海水魚数種の低温致死限界について

 などがある。
 太田 満氏のこうした知識と経験は、瀬戸実験所の利用者の研究に役立っているばかりではない。太田 満氏は水族館がもつ社会教育の使命を十分認識しており、来館者へ水族および水族館の飼育について詳細な説明をツアーとして行う仕事もこなしている。氏のこうした努力から、水族館の来館者は年間6万人を越えており、一般市民への大きな窓として動物学の普及と発展に貢献している。